• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

H5N1高病原性鳥インフルエンザなどによる重症肺障害の治療薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25670465
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関岡山大学

研究代表者

森島 恒雄  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90157892)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードインフルエンザ / 肺炎 / ARDS / 喘息 / H5N1 / H1N1pdm / AH7N9
研究概要

重症インフルエンザ(重症肺炎、脳症、多臓器不全)の病態解析を通じて、治療法の確立を目指した。
H5N1高病原性鳥インフルエンザに加えて、2013年2月より中国でヒトへの感染が拡大しているAH7N9鳥インフルエンザ及び2013/14シーズンに再び流行したH1N1pdmについても検討を加えた。
H1N1pdmは、2009/10シーズン、小児で重症肺炎を起こしたが、今シーズンでも重症の肺炎を多く認めた。宿主側の要因として、A.アレルギー素因を有する小児に肺炎の重症化が認められ、B.肺炎のない小児と比較し有意に高いIgE値を示した。またC.DNAマイクロアレイによる急性期遺伝子発現の解析では、IgE関連遺伝子及び酸化ストレスマーカー関連遺伝子の発現が増強していた。山口大学との共同研究では、D.喘息モデルマウスにおいて、H1N1pdmウイルスは、その他の季節性インフルエンザウイルスよりも、局所(肺胞洗浄液)の炎症性サイトカインの上昇を確認している。これらの結果からH1N1pdmにおける宿主側因子として気管支喘息の重要性を示すことができた。また、治療法についても、抗インフルエンザ薬に加えて、喘息に対応した治療法の有用性も示唆された。
今後侵入が危惧されるAH7N9においても、H1N1pdm同様肺でのウイルスの増殖が示されており、またARDSの発症率や致命率も非常に高く、上記の成績を加味した治療法の組み立てが重要と思われた。また、2013/14シーズン、AH1N1pdmウイルスに両ウイルスに対しても、従来のノイラミニダーゼ阻害薬以外に有効な治療薬が必須であり、我々が検討してきたチオレドキシン(TRX)のインフルエンザ治療薬としての効果を現在検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

H1N1pdmにおける肺炎の重症化に宿主のアレルギー素因が関連する事を①患者の喘息の既往、②IgEの高値、③宿主の急性期遺伝子発現(DNAマイクロアレイによるIge関連遺伝子及び酸化ストレスマーカー関連遺伝子の発現増強)、④喘息モデルマウスのH1N1pdmウイルスによる炎症性サイトカインの局所産生の増加、などから明らかにすることができた。これらは今後侵入が危惧されるAH7N9やAH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスに対する治療法を考える上で、重要な成績と考えられる。
従来我々がインフルエンザ治療薬としてその効果をマウスモデルで明らかにしてきたチオレドキシン(TRX)も上記の病態で有効と考えられ、今後研究を進めたい。

今後の研究の推進方策

我われは既に季節性インフルエンザウイルスとマウスを用いた肺炎モデルでチオレドキシン(TRX:抗炎症作用及び抗酸化作用を確認済み)による肺炎抑制効果を確認している。今後はチオレドキシン+抗インフルエンザ薬の相乗的な肺炎治療効果の確認などを、前述のH1N1pdmウイルス感染喘息マウスや侵入が危惧され肺炎重症化が報告されているAH7N9(国立感染研からの分与を予定)などにおいて、確認していく予定である。
また、抗インフルエンザ薬以外の治療薬として、炎症性サイトカインの抑制を目的とした抗HMGB-1抗体の肺炎抑制効果、及びHMGB-1抗体と抗インフルエンザ薬の併用による相乗的な効果についても、検討していく予定である。

次年度の研究費の使用計画

岡山大学研究施設の耐震工事が2013年度に行われ、一部の研究の実施が困難な状況があった。
また、2013年新たにAH9N7の中国での流行が起きた。また、2013/14シーズンにおいて、AH1pdmウイルスのオセルタミビル耐性株の出現と国内での拡がりが見られた。これらのウイルスについての治療薬の検討が喫緊の課題となるため、研究計画を一部変更し、研究費の一部を2014年度に移行し研究(動物実験モデルを中心として)を継続していくこととした。
とくにインフルエンザウイルス感染マウスモデルを用いて、AH7N9ウイルスや、オセルタミビル耐性AH1N1pdmウイルスに対する、チオレドキシン(TRX)や抗HMGB-1抗体の肺炎治療効果、とくに抗インフレンザ薬との相乗効果について検討する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Analysis of bronchoalveolar lavage fluid in a mouse model of bronchial asthma and H1N1 2009 infection.2013

    • 著者名/発表者名
      Okada S, Hasegawa S, Hasegawa H, Ainai A, Atsuta R, Ikemoto K, Sasaki K, Toda S, Shirabe K, Takahara M, Harada S, Morishima T, Ichiyama T.
    • 雑誌名

      Cytokine.

      巻: 63 ページ: 194-200

    • DOI

      10.1016/j.cyto

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pathogenic mechanisms of influenza A(H1N1)pdm09 infection elucidated on gene expression profiling.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamashita N, Tsukahara H, Tsuge M, Nagaoka Y, Yashiro M, Saito Y, Fujii Y, Oka T, Morishima T.
    • 雑誌名

      Pediatr Int.

      巻: 55 ページ: 572-7.

    • DOI

      10.1111/ped

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi