研究課題
AH7N9、AH5N1ともまだ国内侵入は起きていないが、前者は中国、後者はアフリカを含む全世界で流行が続いている。これらはヒトにおける高い致命率に加え、従来のノイラミニダーゼ阻害薬の効果が低いことが示されている。従来の病態解析の研究成果に基づき、本研究ではインフルエンザ重症例において、抗インフルエンザ薬以外の治療薬(抗炎症・抗サイトカイン・抗酸化ストレス)の開発に向けて以下の検討を行った。1.チオレドキシンによるマウスの重症肺炎治療の有用性をさらに確認することができた。この中で、チオレドキシンは抗インフルエンザウイルス増殖抑制がなくても、抗炎症・抗サイトカイン・抗酸化ストレス効果を示すことで、マウスの致命率を有意に改善した。現在、種々の投与経路を検討中。2.HMGB-1は細胞外において、炎症反応を悪化させる重要な因子であり、ヒトインフルエンザ肺炎や脳症において高値を示している。このHMGB-1に対するマウスモノクローナル抗体を用いて、重症肺炎モデルの検討を行った。結果は、炎症性サイトカインの抑制及び、好中球の肺局所への浸潤や酸化ストレスによる肺障害の悪化を抑制し、著明な致命率の改善を認めた。現在、副作用の有無を検討中。これらの結果、2剤は抗インフルエンザ薬の効果が低い亜型や耐性ウイルスが出現・蔓延した時の重症インフルエンザの治療薬として、極めて重要と考えられた。また、サイトカインストームを主な病態とし、抗ウイルス薬のない感染症(エボラ出血熱、SFTS、MERSなど)においても、重篤な病態における治療薬の可能性も高い。チオレドキシン及び抗HMGB-1抗体とも、マウスとヒトでは高いホモロジーを有しており、それぞれヒト化精製物やヒト化モノクローナル抗体がすでに完成している。現在、これらの薬剤について臨床応用に向け、検討を続けている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Neuropediatrics
巻: 46(1) ページ: 20-5
10.1055/s-0034-1393708.
J Neurovirol
巻: 20 ページ: 73-84
10.1007/s13365-013-0231-5.
Cytokine
巻: 69(2) ページ: 206-10
10.1016/j.cyto.2014.06.006.