研究課題/領域番号 |
25670468
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
後藤 恭宏 宮崎大学, 医学部, 助教 (20558358)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 病原微生物 / 感染症診断 / 次世代シーケンサ / 細菌 |
研究概要 |
臨床検体、例えば、血液検体からDNA試料を調製しても、大量の宿主DNAの混入(全DNAの99.9%以上)は避けられず、大型の次世代シーケンサを用いても病原体由来配列の取得は容易ではない。そこで、病原体DNAを選択的に精製できる試料調製が必要である。本研究では、対象を病原細菌に絞り、宿主と細菌の間でのメチル化DNA(mCpG)パターンの違いを利用した試料調製を検討した。DNAの断片化に注意しながら、DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社)を用いて、全DNAを精製した。この全DNAを用いて、メチル化CpG(mCpG)結合タンパク質を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮試料の調製を検討した。つぎに全DNAをMBD2-Fc結合磁気ビーズと混合した。このとき宿主由来DNAはMBD2-Fcと結合し、磁気ビーズを利用して除去することで細菌DNA濃縮画分を得うると考えた。3条件の供試DNA(62.5、250、1000 ng)から、細菌DNA濃縮画分とそれ以外の画分に分画し、Nextera XT DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)を用いて次世代シーケンサ用ライブラリを調製した(計6ライブラリ)。また、濃縮操作を行っていない全DNAからも、同様のライブラリを調製した。各ライブラリが200万ペアリード以上になるように、次世代シーケンサMiSeqを用いて配列(250 bp x2)を取得した。取得した配列は、マッピングプログラムBowtie2を用いて宿主ゲノム配列に対してマップし、宿主由来(マップリード)と細菌由来(非マップリード)に分け、それぞれの配列数から分画試料における細菌DNAの含有率を算出した。その結果、メチル化CpG(mCpG)結合タンパク質を用いた宿主DNAの除去による試料調製により、細菌DNAの含有率を3倍程度高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度検討したメチル化CpG(mCpG)結合タンパク質を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮試料の調製法と次世代シーケンサを組み合わせることで、検体中に微量含まれる病原体に由来する配列情報の取得を可能にしたと考えられる。しかし、当初の想定に比べて、試料調製における細菌DNAの濃縮効率は高くないことが明らかとなった。解析の精度向上、つまり病原菌の検出感度を上げるためには、濃縮効率をさらに高くすることが望まれる。次世代シーケンサで取得した配列の解析パイプラインについては、今年度取得した配列を用いて構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究の推進方策は当初の計画に沿ったものである。検体中に微量含まれる細菌に由来する配列情報の取得を可能にしたが、さらに濃縮効率を高めることにより、細菌の検出感度を上げられると考えられる。そこで、今年度検討したメチル化CpG(mCpG)結合タンパク質を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮試料の調製をもとにして改良を検討する。また、メチル化CpG(mCpG)認識性DNA制限酵素を用いた宿主DNAの除去も検討する。これらのなかで一番効率の高い手法を用いて、敗血症ラットのモデルを用いた細菌DNA濃縮試料の調製法の有効性評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
メチル化CpG(mCpG)結合タンパク質を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮調製法の検討に時間を要したため、今年度は細菌DNA濃縮試料の調製法の検討が完了できなかった。これにより調製法の他の条件検討(メチル化CpG(mCpG)認識性DNA制限酵素を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮調製法の検討を含む)を次年度に行うこととなったため。 計画に挙げたメチル化CpG(mCpG)認識性DNA制限酵素を用いた宿主DNAの除去による細菌DNA濃縮調製法の検討を行う。これを含め、細菌DNA濃縮調製法の検討に必要な試薬を次年度に使用する。また次年度では、敗血症ラットのモデルを用いて細菌DNA濃縮調製法の有効性を評価するのに必要な動物実験のほか、そのシーケンス解析に必要な試薬を使用する。
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