研究課題/領域番号 |
25670469
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 孝 北里大学, 大学院感染制御科学府, 教授 (00292855)
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研究分担者 |
新井 和明 北里大学, 北里生命科学研究所, 研究員 (30547386)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細菌 / 侵襲性感染症 / 細胞間透過 / ゲノム / 病原因子 |
研究概要 |
当該年度において以下の研究計画を実施し、その知見が得られた。 1.細胞/動物実験を通じた細胞間透過能・病原性を保有するA群レンサ球菌株のスクリーニング 研究室保存菌株の内、患者情報・菌株情報(ムコイド形成など)を含むデータベースを介して侵襲性感染症由来76株(劇症型感染症由来24株を含む)を抽出した。ヒト皮膚角質株化細胞(HaCaT)単層間の透過性およびヒトCD46トランスジェニックマウスの足蹠接種による病原性・致死性の評価を通じて、ムコイド形成を保持する強毒株(髄膜炎由来株と劇症型感染症由来株)を選定した。また、低透過性・低病原性の非ムコイド形成株も対照株として設定した。 2.探索的なアプローチを用いた細胞間透過能に係わるA群レンサ球菌病原因子の同定とその検証 同髄膜炎由来ムコイド型強毒株と同非ムコイド型対照株の全ゲノム解読を行い、そのゲノム比較解析からrocA領域における塩基置換(464番G→Aによる終止コドン)を見出した。強毒株が保有する特異な形質として、ヒアルロン酸(ムコイド構成物質)産生量の亢進が見られた。二次元電気泳動により両菌株間での特異な発現因子の差異も認めた。さらに、対照株から抽出したrocA遺伝子座を強毒株へ導入することで相補株を作製して、同相補株が保有する透過性および病原性の低下を確認することができた。同相補株におけるヒアルロン酸産生量の低下も認められた。以上の結果から、rocA領域での変異は菌体最外層におけるムコイド形成能を惹起し、単層細胞間の透過性および生体への病原性を増強させる可能性が示唆された。本研究で得られたrocA領域での変異に関する知見は文献情報データベース上新規性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画した細胞/動物実験のスクリーニングにより、保存菌株の中から透過性・病原性を保持した菌株の選別を完了した。全ゲノム解読といった探索的アプローチを通じて強毒株と対照株との間のゲノム情報に関する差分を実施することができた。さらに、強毒株に対して弱毒株由来遺伝子を導入することで相補株を作製して、同遺伝子の機能を解析することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
前述のスクリーニングを介して選別された他のムコイド型強毒株(劇症型感染症由来株)の全ゲノム解読を実施し、非ムコイド型対照株との間のゲノム情報に関する差分解析を行う方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
スクリーニングを介して選定された他のムコイド型強毒株(劇症型感染症由来株)の全ゲノム解読を実施していないため。 上記ムコイド型強毒株(劇症型感染症由来株)の全ゲノム解読を行い、非ムコイド型対照株との間のゲノム情報に関する差分解析を行う予定である。
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