当該年度において以下の研究内容を行い、その知見が得られたので報告する。 1.A群レンサ球菌強毒株による細胞間透過能に係わる宿主因子の網羅的探索 前年度に用いたムコイド型強毒株が皮膚角質細胞による単層間を透過する際、非ムコイド型対照株による細胞間透過と比較して、その発現が有意に亢進または減弱する宿主因子を遺伝子発現用microarrayを通じて網羅的に探索した。その結果、発現が亢進する抽出因子としてGstp1遺伝子・ケラチン(Krt)/ケラチン関連因子(Krtap)遺伝子ファミリー等、発現が減弱する抽出因子としてイオン結合遺伝子・受容体活性遺伝子・酵素活性遺伝子等が認められた。 2.抽出宿主因子の妥当性の評価 これら抽出遺伝子を用いてパスウェイ解析による遺伝子networkの構築を試みた。その結果、Gstp1遺伝子を中心として、その下流で発現が亢進するKrt/Krtap遺伝子ファミリーによるnetworkが構築された。RNA干渉によりGstp1遺伝子の発現が減弱した皮膚角質細胞を作製した所、同強毒株による細胞間透過性の低下を確認することができた。以上のことから、ムコイド型A群レンサ球菌強毒株が保有する細胞間透過能に係わる宿主因子のひとつとしてGstp1が存在する可能性が示唆された。本研究で得られた同宿主因子に関する知見には文献情報データベース上新規性がある。
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