研究課題
モヤモヤ病(MMD)は両側ウイリス動脈輪の閉塞による脳虚血と異常側副血管新生による出血とを特徴とする。小児では、動脈硬化などによる脳卒中が極めて稀であるため、MMDは小児脳卒中の主因をなす。MMDは東アジア、特に日本、韓国、台湾に多い。MMDの疾患概念は我が国で確立され、「モヤモヤ病」という日本語の疾患名が広く世界で使われており、その病態に関する研究も我が国が主導的立場にある。申請者らは、日本人MMD患者の全ゲノム相関解析により疾患感受性遺伝子RNF213を特定し、MMD患者の72%に共通なミスセンス変異を同定した。更に、この変異のホモ接合体患者はヘテロ接合体より発症が早く、重症となる。本研究では、高頻度ミスセンス変異を迅速に検出する簡易遺伝子検査法を確立し、簡易遺伝子検査と頭部MRアンギオグラフィー(MRA)を多くのMMD家族で検索することで、MMDの発症リスク予測を可能にすることを目的とする。初めにRNF213遺伝子に同定した疾患感受性変異の遺伝子変異の迅速・簡便な検出システムを確立し、罹患家系内の未発症保因者同定を容易に検出する検査の確立を行った。この検査法は、アレル特異的オリゴヌクレオチド結合に基づいており、変異体の場合、一塩基のミスマッチによりオリゴヌクレオチドの結合が弱まることを検出原理にしている。この検査法を利用し、患者家族の検索を行った。実施に当っては、書面によるインフォームド・コンセントを取得した。承諾を得られた家族において、遺伝子診断と頭部MRアンギオグラフィーを実施した。その結果、軽度の脳表のivy sign、血管径および走行の変化、支配脳領域の体積変化、などを特異的な所見として見出した。今後のこれらの所見の特異性や発症予測における有用性を症例を増やすことにより明らかにしていく。
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