研究実績の概要 |
好中球シグナル伝達経路の解明:健常人好中球を用いた検討では、Fc受容体や補体受容体シグナルにより、PI3K(クラスIA, IB)が活性化されることが明らかになった。一方、同シグナルにより活性化されるsrc-type PTKについては未同定である。局所浸潤型好中球については、G-CSFで前培養することで、模倣モデルを作成した。その後LPS, SAA-1などで刺激したところ、SAA-1刺激においてIL-4産生能が亢進し、一方LPS刺激ではIL-4産生が低下していた。IL-10,ISG15については有意な差が認められなかった。 膜透過性ペプチドではCPP結合野生型MAL、膜移行シグナルを有するMAL、細胞質内滞在型MALを作成し、健常好中球に導入した。それぞれにつき局在が確認された。膜移行型ではプライミングに動く傾向が示唆された。 敗血症における好中球機能・シグナル異常については症例が蓄積し、解析が進んだ。経時的な解析ではday3に比してday0での活性酸素産生能は低く、またCytochrome b558発現も低値であった。重症敗血症患者では健常人と比較してCXCR2の発現が有意に低く、day0においてもっとも顕著であった。PILRαは好中球のadhesionを阻害するシグナルを伝えるが重症敗血症患者では健常人と比較してPILRαの発現は有意に低下し好中球の接着が亢進していた。シグナル系では、広範囲の分子量に亘ってチロシンリン酸化タンパクが検出され、現在それを同定中である。 iPS細胞からの好中球分化誘導系は東京大学医科学研究所大津真博士により開発され、至適化されたが、好中球シグナルやNETs形成に至る経路についての解析までには至らなかった。
|