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2013 年度 実施状況報告書

自閉症患者のiPS神経分化細胞におけるゲノム配列異常の確認と治療効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 25670473
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関山梨大学

研究代表者

久保田 健夫  山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (70293511)

研究分担者 豊田 敦  国立遺伝学研究所, 生物遺伝資源情報総合センター, 特任准教授 (10267495)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードエピジェネティクス / エピゲノム / 治療薬 / iPS細胞 / レット症候群 / バルプロ酸ナトリウム / 遺伝子発現 / てんかん
研究概要

初年度の平成25年度は、以下の2課題の研究を行った。
1 配列を乱さない新しい方法でのレット症候群患者iPS細胞の作製
本研究の目的は、エピゲノム安定化因子のMeCP2タンパク質の異常症(レット症候群)におけるゲノム配列変化の検証である。このような背景の下、最近、初期化4因子(山中4因子)の遺伝子のゲノム配列内に挿入を回避し、プラスミドのかたちで細胞にエレクトロポレーション法で導入することでiPS細胞を作製する技術「エピソーマルiPSCリプログラミング法」が開発された。この方法だとiPS細胞作製時の人為的な配列変化操作を回避でき、真の配列変化を見いだすことが出来る。これを受けて、早速試したところ、対照者(TIG111)の線維芽細胞からiPS細胞が樹立できることを確認した。
2 レット症候群の治療薬による遺伝子発現異常の是正効果の検証
レット症候群のてんかん発作に使用されているバルプロ酸ナトリウムに、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害して、遺伝子発現を回復する作用があることが判明した。これを受けて、ヒト神経培養細胞(SH-SY5Y)において、バルプロ酸ナトリウムの投与により発現が回復する遺伝子について調べた。その結果、ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用を有しない類似構造化合物(バルプロミド)が少数の遺伝子ししか顕著な発現変化を生じさせなかったのに対し、作用を有するバルプロ酸ナトリウムは、うつ病患者で発現低下を認めるBDNF遺伝子を含む多数の遺伝子の発現を回復させることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度に実施した研究から、疾患治療に用いている薬剤がエピジェネティックな作用を介して、遺伝子発現異常を是正しうる可能性が示された。またその遺伝子数は、当初より多い、300を超える遺伝子であった。
しかしながら、その是正が、配列変化の抑制を介していることまでは検証できていなかった。
一方、材料として用いるレット症候群患者のiPS細胞の作製方法にゲノム配列を乱さない、あらたな方法が開発され、その技法(エピソーマル法)を導入することができることが判明した。本研究の目的がゲノム配列変化を検証することであることから、実験系による人工的(アーティファクト)な配列変化はできるだけ避けたい。そこで、既に樹立してあったレット症候群患者のiPS細胞ではなく、エピソーマル法を用いて新たなiPS細胞を樹立することに変更した。
以上より、今年度は、当初の、配列変化の検証ができなかったが、より良い材料(iPS細胞)を用いて、次年度に、配列変化を検証することが出来るようになり、これまでの進捗状況は、遅れている面と利点とが相殺され、おおむね順調に進展している、と判断した。

今後の研究の推進方策

当初は、配列変化を来した箇所をゲノムワイドに探索し、変化がみられた箇所において、薬剤投与によりその変化が阻止できるかを明らかにしていく研究計画であった。
一方、初年度の研究で、神経培養細胞において薬剤でエピジェネティックなメカニズムを介して、発現変化する遺伝子領域が明らかになった。
これを受け、遺伝子発現変化を来した遺伝子の近傍領域において、エピジェネティックな修飾変化とともに、配列変化している可能性が考えられる。
したがって、ゲノムワイドに探索するよりも、発現変化を来した遺伝子領域に対象ゲノム領域をしぼりこみ、エピジェネティクス修飾変化を確認した上で、その領域の配列変化を見いだすという進め方が良いと考えられ、探索の方向性を適切に修正して、初期の目的を達成できるように進めることとした。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Comparison of genomic and epigenomic expression in monozygotic twins discordant for Rett syndrome.2013

    • 著者名/発表者名
      Miyake K, Yang C, Minakuchi Y, Ohori K, Soutome M, Hirasawa T, Kazuki Y, Adachi N, Suzuki S, Itoh M, Goto Y, Andoh T, Kurosawa H, Akamatsu W, Oyama M, Okano H, Oshimura M, Sasaki M, Toyoda A, Kubota T.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 8 ページ: e66729

    • DOI

      DOI: 10.1371/journal.pone.0066729

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The role of epigenetics in Rett sydrome.2013

    • 著者名/発表者名
      Kubota T, Miyake K, Hirasawa T
    • 雑誌名

      Epigenomics

      巻: 5 ページ: 583-592

    • DOI

      doi: 10.2217/epi.13.54.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Epigenetics in neurodevelopmental and mental disorders2013

    • 著者名/発表者名
      Kubota T, Miyake K, Hirasawa T
    • 雑誌名

      Med Epigenet

      巻: 1 ページ: 61-67

    • 査読あり
  • [学会発表] X染色体不活化関連疾患:エピゲノム異常に起因する. ワークショップ2PW10染色体不活性化のエピジェネティクス.2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      20131203-20131206
    • 招待講演
  • [学会発表] Environment, Epigenetics and Neurodevelopment. Pre-Congress Workshop 2: Epigenetic Analysis/ EWAS.2013

    • 著者名/発表者名
      Kubota T
    • 学会等名
      Pre-Congress Workshop 2: Epigenetic Analysis/ EWAS. 8th World Congress on Developmental Origins of Health and Disease
    • 発表場所
      サンテック国際会議場(シンガポール)
    • 年月日
      20131116-20131116
    • 招待講演
  • [学会発表] 妊婦の低栄養と胎児のエピジェネティクス変化. ワークショップ5「若年女性の栄養管理を考える –DOHaDを見据えた栄養管理」.2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫、平澤孝枝
    • 学会等名
      第35回日本臨床栄養学会総会・第34回日本臨床栄養協会総会(第11回大連合大会)
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府京都市)
    • 年月日
      20131004-20131006
    • 招待講演
  • [学会発表] 精神発達とエピジェネティクス. 精神疾患のジェネティクスとエピジェネティクス.2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫
    • 学会等名
      日本心理学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      20130919-20130921
    • 招待講演
  • [学会発表] 胎生期環境と疾患素因としてのエピゲノム変化. シンポジウム8「ARTとエピゲノム-児の将来を見据えて-」2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫、小幡千枝、前山弘毅、平澤孝枝
    • 学会等名
      第31回日本受精着床学会総会・学術講演会
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター(大分県別府市)
    • 年月日
      20130808-20130809
    • 招待講演
  • [学会発表] Epigenetics in Neurodevelopmental Disorders2013

    • 著者名/発表者名
      Kubota T
    • 学会等名
      Epigenomics & Metabolomics Symposia-2013
    • 発表場所
      ハーバード大学(ボストン、米国)
    • 年月日
      20130710-20130711
    • 招待講演
  • [学会発表] 自閉症のエピジェネティックな理解 シンポジウム1「自閉症の神経科学的研究」2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫
    • 学会等名
      第55回日本小児神経学会総会
    • 発表場所
      iichiko総合文化センター(大分県大分市)
    • 年月日
      20130530-20130601
    • 招待講演
  • [学会発表] エピゲノム~環境を反映するゲノム情報~. シンポジウム1「栄養とエピゲノム」.2013

    • 著者名/発表者名
      久保田健夫
    • 学会等名
      第67回日本栄養・食糧学会大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      20130524-20130526
    • 招待講演
  • [備考] 山梨大学医学部環境遺伝医学講座

    • URL

      http://www.epigenetmed.com/

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公開日: 2015-05-28  

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