研究課題
レイノー現象に代表される寒冷刺激に伴う炎症機序は未だ明らかにされておらず、その解明は患者QOLの改善に寄与し、寒冷という物理的な刺激に対する生体応答の解明にもつながる。われわれは、これまで、寒冷刺激により炎症が惹起される2つのメンデル遺伝疾患、Cyropyrin-associated periodic syndrome及びAicardi-Goutieres syndromeの患者診療に関わってきた。本研究では2症候群をモデルとして、寒冷刺激による炎症発症機序の解析を試みた。H26年度の成果として、これまで報告された変異は同定できなかったAicardi-Goutieres syndrome 本邦3症例の全エクソーム解析を行ったところ、新規原因遺伝子IFIH1を同定した。同遺伝子は、ウイルス由来の核酸を認識するパターン認識受容体の1つである。機能解析により、それぞれの変異はIFIH1の機能獲得型の変異であり、その恒常的な活性化によりインターフェロンが過剰産生されることが病態として重要であることが判明した。また、Aicardi-Goutieres syndromeのうち、優性遺伝で発症するTREX1変異症例のiPS細胞を作成できた。
2: おおむね順調に進展している
Aicardi-Goutieres syndromeの新規遺伝子を同定でき、その発症機序として、細胞内核酸受容体MDA5の恒常的な活性化によるインターフェロン産生過剰を示すことができた。本研究を始める前調査として、Aicardi-Goutieres syndromeの全国調査を行ったおかげで、3家系3症例の既知変異陰性例を集積することができ、結果として新規遺伝子IFIH1を同定できた。また優性遺伝子形式で発症するTREX1変異のiPS細胞を作成することができた。一方、CAPSにおける寒冷誘発による炎症性サイトカイン産生機序はまだ検討中である。寒冷刺激によるAicardi-Goutieres syndromeにおける炎症発症機序の解析は予定以上に進んでおり、全体としてはほぼ順調と考える。
IFIH1変異によるAicardi-Goutieres syndromeの症例は、冬期の凍瘡を合併しないAicardi-Goutieres syndromeであり、同じインターフェロン過剰産生を病態として共有しているにもかかわらず、他の遺伝子異常(TREX1、SAMHD1等)による凍瘡を伴うAicardi-Goutieres syndromeとの対比が大変興味深い。これらの寒冷に対する2つの表現型の違いに着目し、寒冷刺激とインターフェロン産生という結果の違いについて解析をすすめる。解析方法としては、患者検体が得にくいため、IFIH1変異陽性Aicardi-Goutieres syndrome由来のiPS細胞を作成して、iPS細胞からの分化系を用いて、神経細胞への分化、寒冷刺激に対する反応性を検討していく。
概ね予定通りの進ちょく状況である。
上記余剰分の予算を用いて、新規Aicardi-Goutieres syndromeの原因遺伝子IFIH1変異陽性患者からのiPS細胞作成を追加で行う。
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Am J Hum Genet
巻: 95 ページ: 121-125
10.1016/j.ajhg.2014.06.007