研究課題
小児の初診と再発の急性骨髄性白血病(AML) 10例について、次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析により再発、進展に関与する遺伝子を抽出し、AML380検体でターゲットリシーケンスを行い頻度や臨床像との関係を検討した。初診時のAML19例で全エクソン解析行い、RAD21やSTAG2などのコーヒシン関連遺伝子やBCOR/BCORL1などの新規の原因遺伝子変異を同定した。小児AML192例で検討したところ、BCORとBCORL1の変異は合わせて約7%、cohesin complex群(SMC1A,SMC3,RAD21,STAG)の変異を約10%に同定し、これらの変異はそれぞれ相互に排他的であり、各々がAML発症に寄与しているものと考えられた。融合遺伝子の解析では、非ダウン症候群急性巨核芽球性白血病(non-DS-AMKL) 43例中CBFA2T3-GLIS2を12例(27.9%)、NUP98- JARID1Aを4例(9.3%)、OTT-MALを10例(23.6%)、MLL-AF9を2例(4.7%)、MLL-AF10を1例(2.3%)認め、OTT-MAL以外は予後不良であった。これらの症例におけるFLT3-ITD、KIT、RAS、WT1の各変異とMLL-PTDは比較的稀であった。今後再発例の検討を行う予定である。AMLでNUP98-NSD1陽性例は予後不良であることを見出したが、今年度はこれらはEVI1とMEL1遺伝子が高発現であり、EVI1遺伝子高発現群はM7やMLL再構成群では有意に予後不良であり、MEL1高発現群は全体の中でも予後不良であることを見出した。次年度はこれらの再発例の解析を行い、初発から再発へのクローン進化(clonal evolution)を解析し、これによりAMLの病態解明と分子標的療法の基盤整備に貢献する。
2: おおむね順調に進展している
小児の初診と再発のAML 10例について、全エクソン解析により再発、進展に関与する遺伝子を抽出し、AML380検体でターゲットリシーケンスを行い頻度や臨床像との関係を検討した。これらの解析から、初診と再発AMLにおける再発と進展に関与する遺伝子を一部抽出している。さらにこれらの遺伝子に関して細胞株やマウスを用いて機能解析を行い、クローン進化の機構を明らかにし、分子標的薬の基盤を確立する予定である。初診時の全エクソン解析をAML19例で行い、RAD21やSTAG2などのコーヒシン関連遺伝子やBCOR/BCORL1などの新規の原因遺伝子変異を同定した。さらにターゲットリシーケンスによりこれまでAMLで報告されている遺伝子の詳細な解析を行っている。融合遺伝子の解析では、non-DS-AMKL 43例中CBFA2T3-GLIS2を12例(27.9%)、NUP98- JARID1Aを4例(9.3%)、OTT-MALを10例(23.6%)、MLL-AF9を2例(4.7%)、MLL-AF10を1例(2.3%)認め、OTT-MAL以外は予後不良であった。これらの症例におけるFLT3-ITD、KIT、RAS、WT1の各変異とMLL-PTDは比較的稀であり、臨床像との詳細な解析を行っている。NUP98-NSD1等の融合遺伝子に関する解析で、NUP98-NSD1陽性例はきわめて予後不良であることが判明した。今年度はこれらが示す特徴的な遺伝子発現パターンから、これらの一群はEVI1とMEL1遺伝子が高発現であることが判明し、EVI1遺伝子高発現群は、AMKL-M7やMLL再構成がみられる群では有意に予後不良であり、MEL1高発現群はAML全体の中でも予後不良であることを見出し、その臨床的意義の詳細な解析を行っている。
1)初診と再発の10例のエクソーム解析で抽出された遺伝子については、AML-05の190例でターゲットリシーケンスにより解析し、再発に関与する遺伝子をみい出した。今後はさらに症例を増やして検討をする。次世代シーケンサーによる解析では、コーヒシン関連遺伝子などの新規遺伝子が同定され、今後詳細な臨床像との相関等の検討を行う予定である。2)EVI1とMEL1遺伝子が高発現であることが判明し、EVI1遺伝子高発現群は、AMKL-M7やMLL再構成がみられる群では有意に予後不良であり、MEL1高発現群はAML全体の中でも予後不良であることを見出し、その臨床的意義の詳細な解析を行っている。3)新規分子診断法の開発とリスク別層別化の実用化 本研究で集積した大量の遺伝子データおよびJPLSGと群馬県立小児医療センターの白血病データベースによる臨床データの解析により、白血病の病型と関連のある遺伝子異常や、メチル化の特徴を抽出し、遺伝子・ゲノム、エピゲノムの異常に基づいた、予後や再発の予測システムが構築できる可能性について詳細な検討を行う。また、これの解析から抽出された、provisioalな病型診断法、予後予測法について、新たな症例セットを用いて、その再現性の確認を行う。4)in vitroにおける造腫瘍性に関する検討 平成26年度にみい出された候補がん遺伝子の変異型遺伝子については、レトロウィルスを用いて遺伝子導入し、in virtoにおけるコロニー形成能の解析、増殖速度の検討、さらにはヌードマウスにおける可植性の解析を行う。5)メチル化の網羅的解析 メチル化の有無に関して網羅的に検討し、エピジェネティックな転写抑制機構の解明を試みる。
平成26年度に小児AML 19例の次世代シーケンサーによる全エクソン解析を行った。抽出されてきた既知の遺伝子に加え新規15遺伝子につきサンガーシーケンスにより検証を行い、新規5遺伝子を同定し、その遺伝子を小児AML 200例でHiSeq2000とMiSeqを用いてターゲットリシーケンスを行った。初診と再発の10例についても全エクソン解析を行ったが、当初の計画よりAMLの再発時の検体の収集が少なかったこともあり、研究費110万円を次年度の使用のために先送りし、症例数を増やして検討する。またEVI1, MEL1 の発現も詳細に検討する予定なので、PCR、シーケンスの試薬を中心に平成26年度の先送りした研究費を合わせて次年度の研究費を使用する予定である。さらにエクソーム解析のキットも購入する予定で、クローン進化を明らかにする。
平成26年度に小児AML 19例の次世代シーケンサーによる全エクソン解析を行い、新規12遺伝子につきサンガーシーケンスにより検証し、新規5遺伝子を同定し小児AML 200例でターゲットリシーケンスを行った。当初の計画よりAMLの再発時の検体の収集が少なかったこともあり、一部の研究費を次年度の使用のために先送りした。次年度はさらに再発検体の症例を増やしてクローン進化についても検討を行う。またAML関連15標的遺伝子のうち5遺伝子につきターゲットリシーケンスを行い、小児AMLの原因遺伝子をみいだす。これらの解析で同定した遺伝子異常をリアルタイム PCR法を用いてEVI1とMEL1遺伝子の発現解析を行い予後との関連を検討しており、より詳細な解析を通じてクローン進化の機序を解明する。また<今年度の推進計画>の如く、大量のデータの解析、in vitroの研究、網羅的メチル化解析も予定している。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (12件)
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