研究課題
Pelizaeus-Merzbacher病(PMD)は、中枢神経系の髄鞘形成不全を特徴とする小児神経難病である。最も頻度の高い変異であるPLP1重複は、過剰遺伝子発現がその病態と考えられるが、現在有効な治療法はない。そこで、本研究ではPLP1重複変異に対する治療法を開発するために、合成核酸様物質モルフォリーノによるPLP1遺伝子の特異的発現抑制を用いたアンチセンス療法の開発を行う。モルフォリーノは、効果の持続性、効率、安全性から最も臨床応用の可能性の高いアンチセンスオリゴである。対象はPLP1重複のモデル動物であるPLP1トランスジェニックマウスで、脳実質内、脳室内、血管内、鼻腔内など様々な投与法について検討し、最も効果的な治療法を探る。この研究成果は、ゲノム病一般の治療法開発に応用可能な技術として期待できる。昨年度、培養細胞を用いたin vitroでのモルフォリーノ配列の選定と効果検証を行い、有効な遺伝子発現抑制効果を有するモルフォリーノを作成した。そこで、本年度はこのモルフォリーノを用いて、PLP1とランスジェニックマウスを用いてin vivoでの効果の検証をおこなった。モルフォリーノは、脳など移行性が低い組織への移行性を高めた修飾モルフォリーノ(vivo-morpholino)を使用した。GeneTools社にて合成したPLP1を標的とするvivo-morpholinoをマウス脳内に直接投与し、その安全性と効果をけんしょうしたが、通常濃度のvivo-morpholino投与にて、投与後死亡個体が多くでた。死亡個体では、脳内の投与部位の組織破壊が生じていることが判明した。投与法など検討が必要であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
効率的な遺伝子発現抑制効果をもつモルフォリーノの配列を決定し、これを用いたvivo-morpholinoを合成した。また、出生直後の新生仔マウスへの脳内投与に関する技術を確立した。これらの過程はほぼ予定通りに順調に運んだ。一方で、vivo-morpholinoの組織毒性の可能性が浮上しており、検討が必要となっている。
新生仔マウスの脳内への薬剤投与技術を確立することができたが、vivo-morpholinoの組織毒性という予想しなかった問題に直面しており、投与量や投与法の再検討が必要になっている。また、vivo-morpholinoの臨床応用が困難なようであれば、shRNAなど他のアンチセンスを用いる必要性に関しても検討していく予定である。
vivoモルフォリーノをPLP1トランスジェニックマウスに投与して、治療効果を検証する計画であったが、実験に使用するマウスの交配で予定通りに変異個体が得られず、十分な個体数を確保することができなかった。また、vivoモルフォリーノに、当初予想していなかった細胞障害性が存在することが明らかとなり、当初の計画通りに実施できず、研究計画の変更が必要になった。
物品費800千円(内訳 組織学的解析用抗体など 400千円、定量PCRなど分子生物学的解析用試薬 400千円)
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
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