研究課題
本邦のてんかんの有病率は約1.0%で、その70%は小児期に罹患する頻度の高い疾患である。小児難治てんかんの多くは行動異常や知的障害を合併し、しばしば家庭生活や学校生活を困難にする。小児難治性てんかんの中で、先天性脳形成障害を原因とするものは少なくない。本研究で対象とする大脳皮質形成異常(FCD)と片側巨脳症(HME)は大脳皮質の一部分に形成異常がみられる疾患である。近年の遺伝子解析技術はゲノムレベルでの網羅的解析を可能にした。当施設は年間約100例のてんかん外科手術を有する国内有数の施設であり、臨床データのみならず病理標本や凍結組織を管理している。こうした環境を基に、外科的切除組織から神経細胞のDNAだけをcell sorting法により取り出し、CGH(Comparative genomic hybridization)アレイ法と次世代シークエンサーによるターゲットシークエンス解析を用いてFCDとHMEの原因遺伝子を解析した。研究参加の承諾を得た28症例を解析した結果、HME1例に病巣部の遺伝子異常を約15%の割合で見出し、病変部の体細胞変異を明らかにした。また、FCD4例で胚細胞のヘテロ接合体異常を明らかにした。さらに、その病原性について遺伝子異常発現ベクターを作成し、HeLa細胞への移植とマウス子宮内胎仔脳内移植により、Gain-of-functionによる機能障害が神経細胞の異常化をもたらすことを明らかにした。現在、in vivo研究のためのモデルマウス作成とそれを用いた原因遺伝子産物の機能回復による治療法の開発を展開している。
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Pediatr Int
巻: 57 ページ: 472-475
doi: 10.1111/ped.12509.