研究課題/領域番号 |
25670487
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
中村 京子 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (30124481)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞表面糖鎖 / 細胞老化 / 幹細胞 / 糖脂質 |
研究概要 |
体性幹考え細胞は、再生医療や細胞移植において有用な細胞である。特に女性の場合には、子宮内膜組織や医療廃棄物である月経血からの幹細胞調製が注目されている。しかし、子宮に由来する細胞の採取には加齢による年齢制限があり、将来的には若い時期の幹細胞保存も視野にいれた対応が必要とされる。その為には「加齢による幹細胞の老化」を意識し、幹細胞そのものの性質を理解することが不可欠とる。申請者らは、「細胞表面の多様な糖鎖は、分化、増殖、老化の状態を反映する」という事実に鑑み、年齢に伴う幹細胞の糖鎖変化に焦点を絞った解析を行う。その結果より、幹細胞の質を担保するマーカー糖鎖を特定し、その抗体による幹細胞の分取・保存を行う。また、iPS 細胞についても採取組織の老化と糖鎖発現との関係を探る。 容易に入手できる子宮内膜組織や、医療廃棄物である月経血から体性幹細胞やiPS細胞を調製する手法は、今後、再生医療や細胞移植が身近な治療法として定着普及するために、重要な技術になると考えられる。申請者らの研究により、特定の糖鎖の発現が上記の子宮由来の細胞で明らかになれば、造血幹細胞におけるCD34(抗原は糖鎖である)と同様に、その抗体は良好な幹細胞の質を担保するマーカーとして使用でき、さらには、抗体カラムによる濃縮を介した幹細胞の長期保存、安定的な供給につながる。また、子宮由来の細胞から作成したiPS細胞に関しても、糖鎖の変化が検出されれば、同様な技術の発展に貢献できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年齢の異なる成人から採取した正常子宮内膜組織あるいは月経血を用いて幹細胞やiPS 細胞を調製した。その細胞を用いて、間葉系細胞への分化能や、テロメラーゼ活性、分化マーカータンパク質の発現等を調べた。得られた幹細胞について、レクチンマイクロアレイを使用した糖タンパク質の解析や糖脂質の解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
糖タンパク質・糖脂質の糖鎖に対する抗体の作成を行う。 注目すべき糖タンパク質や糖脂質が特定され、その糖鎖を認識する抗体が市販されていない場合には、モノクローナル作成する。糖脂質の抗体作成に関しては、「単離した目的の糖脂質ではなく、その糖脂質が含まれるラフト画分を調製して免疫する」優れた方法が確立されている(Katagiri Y., Glycoconjyugate J. 2001) 抗体を用いた効率的な幹細胞の選別とそのin vitro, in vivoにおける特性解析を行う。 目的の幹細胞を選別する方法として、抗―糖鎖抗体を用いたカラムを検討する。細胞は、ビオチン化抗―糖鎖抗体を結合後、アビジンーマグネットビーズを介してカラムにトラップし、洗浄後、マグネットを除去することにより目的の細胞のみをカラムから溶出する。細胞老化を指標として得られた幹細胞について、in vitro, in vivoの系で増殖能、分化能、腫瘍化能に関して検証する。 テロメラーゼ活性から見える幹細胞を指標として注目すべき糖脂質を特定し、糖鎖を認識するモノクローナル抗体を作製する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、提供者より細胞リソースの提供を受け、年齢に伴う幹細胞の糖鎖変化に焦点を絞った解析を行う予定であった。また、その結果より、幹細胞の質を担保するマーカー糖鎖を特定し、その抗体による幹細胞の分取・保存を予定していた。しかしながら新規の細胞リソースの提供数が少なく、既存の細胞リソースの解析がメインとなった。外注による解析を行い、統計データとして十分なデータ量を確保できた。しかしながら、新規細胞リソースの樹立、新規の細胞培養、iPS細胞の樹立を行わなかったことから、本年度の科学研究費補助金、助成金の経費使用に関して予定を下回る支出額となったため、次年度使用額が生じた。 次年度以降は、新規の細胞リソースはもちろんのこと、既存リソースについても外注による解析のみならず、研究室内における抗体、糖鎖マーカーを用いた解析を積極的に行う予定である。新たな細胞リソースの培養、iPS細胞の樹立の試みが既にスタートしているため、次年度使用額と合わせた金額を使用する経費計画となる。
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