研究課題/領域番号 |
25670488
|
研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
永田 浩一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 部長 (50252143)
|
研究分担者 |
山形 崇倫 自治医科大学, 医学部, 教授 (00239857)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自閉症 / 大脳皮質 / 神経細胞 / RBFOX1 / Migfilin |
研究実績の概要 |
RBFOX1はRNAに結合してmRNA-splicingを制御する蛋白質である。近年の研究で、自閉性障害(ASD)に置けるハブ遺伝子であることが報告されると共に、知的障害、統合失調症でも遺伝子レベルの異常(遺伝子破壊、ハプロ不全、mRNA量の変化)が報告されている。そこで、RBFOX1の病態機能を明らかにすることを目的として、この分子が大脳皮質発生と機能獲得に果たす役割りの解析を行なった。具体的には、大脳皮質構造・機能解析バッテリーを用いて、1)皮質神経細胞移動、2)アクソン伸長、3)樹状突起発達、4)細胞周期、5)海馬歯状回顆粒神経細胞形態、6)皮質神経細胞移動のライブイメージ、7)海馬神経細胞スパイン形成、8)電気生理学的解析(途中段階)について解析し、RBFOX1の機能不全が大脳皮質の構造的・機能的発達に及ぼす影響を検証した。その結果、RBFOX1は中枢神経系の発生・機能獲得を広範に制御していることが判明した。特に発生期の皮質神経細胞の移動障害のメカニズムについては詳細な解析を行なった。これらの結果より、RBFOX1の機能障害が、自閉性障害などの多彩な臨床症状と関連する可能性が示された。 Migfilinは細胞形態の調節や細胞接着に関与する分子である。最近、共同研究者によってmigfilin 遺伝子の欠失がASD 患者で初めて見出された。そこで、migfilin が大脳皮質形成期における神経細胞移動に重要であるか解析した。マウス発達期の脳でmigfilin は胎生17.5日において発現のピークが確認された。胎生14日でmigfilin 遺伝子のノックダウンをしたところ、生後2日目の段階で顕著な神経細胞の移動障害が見られた。このことから、migfilin がマウス大脳皮質形成時の神経細胞移動に必要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉症の病態関連遺伝子であるRBFOX1とMigfilinについて、原著論文を投稿するデータが揃ったから。また、新たに構築した包括的な実験システムが順調に稼働し、その他の自閉症病態関連遺伝子であるTimeless, Shank, NR1D1の病態機能解析も順調に進んでいる。遺伝子レベルでの変異解析も順調に進展しており、今後、興味深い病態関連遺伝子が同定できる可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行過程で申請者らは、マウス脳の発生・発達の変化を指標として自閉症の病態関連遺伝子の機能を解析する実験システムを構築した。このシステムは、1)大脳皮質神経細胞の移動と形態変化、2)アクソンと樹状突起の発達、3)神経幹細胞の増殖、4)海馬神経細胞の形態変化と増殖、5)大脳形成のライブイメージ観察、6)電気生理実験によるシナプス機能、を生きた組織レベルで解析するものである。一方、細胞レベルでも、1)シナプス形成、2)他の蛋白質との相互作用の解析を行なう。さらに、解析対象の遺伝子の働きを一時的に低下させることでマウス個体レベルでの行動解析も行う。以上のような包括的な手法を用いて、自閉症の原因遺伝子が大脳皮質構築に果たす役割と疾患との関連性を追求してゆきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RBFOX1とMigfilinに関しては論文投稿のためのデータがほぼ揃ったが、幾つかの確認実験をする必要がある。Timeless,Shank2,NR1D1については、順調にデータが揃いつつあるが、原著論文として投稿するためには、3種類ほどの実験をさらに進める必要がある。そのための物品費と人件費として次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験は平成27年10月の終了を目標としている。この期間に、必要と思われる実験を追加し、研究を完成させたい。具体的には約80万円を研究補助員の人件費に充て、残額を試薬やキット等の物品費に充当したいと考えている。
|