研究課題/領域番号 |
25670491
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
目野 主税 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20311764)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 先天異常 / マウス |
研究概要 |
ヒトおける妊娠前糖尿病は、先天異常を引き起こすリスク要因であることが知られている。特に心臓血管系の先天異常と高い相関を示し、さらには臓器の左右性の異常を伴うケースが報告されている。しかしながら、糖尿病がこのような左右形態異常を伴う心臓先天異常を引き起こす機構は全く理解されていない。そこで、本研究ではマウスをモデル動物として、糖尿病が先天異常を引き起こす分子機序を解明することを試みた。糖尿病が先天異常を引き起こす原因は、理論的には高濃度グルコースによる胚への直接的影響と母体インスリン濃度や高血糖による様々な代謝変化等の間接的影響が考えられる。高濃度のグルコースが直接的に胚に作用するかは、高グルコース培地を用いた全胚培養によって検証することが可能であるため、ICR系統を用いてE7.7胚の全胚培養を行った。胚ターニング及び心臓ルーピングの指標で左右非対称な形態形成を評価すると、高グルコース培地で培養した場合、コントロール培地と比較して有意に多くの個体で左右非対称性が逆転した。このことは、グルコースが催奇形因子として直接的に左右軸形成に影響を及ぼすことを示唆している。そこで、側板中胚葉におけるNodal及びPitx2の発現をwhole-mount in situ hybridizationによって調べた所、高グルコース培地では両者の発現が消失していた。以上の結果から、妊娠前糖尿病による先天性の心臓奇形の解析にマウスの全胚培養が活用できること、また、高グルコースは左右軸形成に必須のNodal-Pitx2経路を阻害することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、糖尿病による左右軸形成異常を解析する為の、高グルコース培地による全胚培養の系を確立することができた。実際に、左右軸形成が高グルコースによって阻害されることが確認され、今後の解析の布石となった。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病による左右軸解析の系が確立されたので、高グルコースが如何に左右軸を撹乱するかの解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、当初申請額からの予算減額措置に対応する為に、研究計画を練って予算消化を減らす戦略にした。さらには、他の研究課題で不要になったマウスを活用することにより、結果として直接経費の使用をせずに済んだ。平成25年度は、平成26年度の研究遂行に必要な実験系を確立したので、平成26年度は繰り越しによって得られた当初申請額相当の予算で、研究を効率良く遂行できることになった。 平成26年度の研究に必要な予算は当初申請から減額されていたが、平成25年度の予算を繰り越すことによって計画通りに研究を遂行する。
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