研究課題/領域番号 |
25670492
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中川 修 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40283593)
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研究分担者 |
坂部 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00525983)
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心血管形態形成 / 内皮細胞 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本研究はBMP-ALK1シグナル伝達系による発生・形態形成制御機構を、私たち自身が報告した新規下流分子TMEM100に焦点を当てて解析するものである。 本年度までに私たちは、ヒト培養血管内皮細胞におけるTMEM100のmRNA発現がBMP9/BMP10刺激によるALK1受容体シグナルの活性化により著明な亢進を示すことを明らかにした。既知のALK1シグナル下流遺伝子の発現亢進が刺激後数時間後までにピークに達するのと対照的に、TMEM100の発現亢進は刺激後24時間まで徐々に増加する様式を取った。そのTMEM100 mRNA発現亢進にはSMAD転写因子の活性化が必須であるが、上記の既知ALK1シグナル下流遺伝子がSMAD転写因子のリン酸化による活性化と転写調節領域への結合によって生ずるのに対し、TMEM100遺伝子の転写調節領域にはSMAD転写因子の結合が認められないと考えられた。TMEM100 mRNA発現亢進には新たな蛋白質因子の生合成が必須であることも判明し、SMAD転写因子の活性化によって転写・蛋白質合成活性化を示す何らかの因子がTMEM100 mRNA発現の直接の制御因子になっていることが示唆された。また、TMEM100と協調して働く複合体パートナー分子として、細胞内分子輸送に関連するタンパクとの複合体形成を示唆する結果を得たが、TMEM100発現トランスジェニックマウス系統樹立については、マウスの正常発育にはTMEM100の発現部位・発現レベルの精密なコントロールが必要と考えられ、異なるストラテジーによるマウス系統の作成が必要と考えられた。さらに、TMEM100の心血管形態形成における意義に関して、ノックアウトマウスの詳細な検討を進め、全身血管の胎生期における形態形成に加えて、心臓房室管の内皮間葉細胞形質転換にTMEM100が必須の役割を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内皮細胞におけるTMEM100の遺伝子発現が、BMP9もしくはBMP10によるALK1受容体シグナル活性化に引き続く、SMAD転写因子の活性化、何らかの蛋白質因子の生合成を介して生ずることが明らかになった。一方、TMEM100と複合体を形成して因子についての知見を得るとともに、TMEM100欠損マウスが心臓房室管の内皮間葉細胞形質転換の重篤な障害を生ずることを明らかにした。これらより、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、新しい血管内皮分子TMEM100の心血管発生・形態形成における発現制御機構、機能メカニズム、BMP-ALK1シグナル伝達系における生理的意義について、多方面から解析しようとするものである。今後、TMEM100発現制御機構に関しては、培養内皮細胞のみならずトランスジェニックマウス胎仔を用いたレポーター解析も取り入れて研究を進める。分子機能メカニズムについては、TMEM100の複合体パートナー候補の胎生期心血管系における発現様式の検討や、複合体形成による機能制御の可能性について検討して行く。また、生体レベルでTMEM100の複合体パートナーを検索するため、新しい組換えマウス系統の樹立も目指して研究を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの実験計画のうち、TMEM100発現制御機構の解析や複合体パートナー因子の検討を行ってきたが、遺伝子組換えマウス系統の樹立・繁殖や分子生物学的解析には至っておらず、そのため一部の動物・生化学・分子生物学的解析などが次年度に施行されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
TMEM100関連の遺伝子組換えマウス系統の樹立・繁殖と生化学・分子生物学的解析に加え、複合体パートナーを手がかりにしたTMEM100分子機能の解析、エピジェネティック機構も含めたTMEM100遺伝子発現制御メカニズムの解析を継続して行く計画である。
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