研究課題/領域番号 |
25670493
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
藤永 英志 独立行政法人国立成育医療研究センター, 周産期・母性診療センター, 医師 (60623733)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺低形成 / 血管内皮前駆細胞 / 血管内皮成長因子 |
研究概要 |
本研究では、新生児肺発達障害における血管内皮前駆細胞(EPC)機能障害を明らかにする。平成25年度は下記の実験により、肺低形成疾患による EPC 機能やその制御メカニズムに対する in vivo における作用を調べた。 1.肺低形成を生じるヒト胎児疾患診断症例の臍帯血中 EPC を flow cytometry と colony assay により、血漿 VEGF、SDF-1 濃度を ELISA により定量し、コントロールと比較。 2.肺低形成症例の剖検・手術で得られた肺組織を用いて、lung morphometry、肺組織中 EPC、VEGF, SDF-1 蛋白発現を定量し、コントロールと比較。 動物実験では、低形成肺における VEGF 発現の異常が報告されている。虚血組織では、VEGF-A、SDF-1 が EPC の mobilization、recruitment、homing、differentiation を促進する。ヒト肺低形成症例でも、肺におけるVEGF、SDF-1 発現の異常、血漿 VEGF、SDF-1 濃度の変化、EPC 機能の異常が予測される。 臍帯血はヒト胎児疾患診断症例11例、早産児10例、正常コントロール5例得ることができ、EPC 定量、EPC の 1 subtype である ECFC の分離・培養・凍結保存、臨床データの収集を行った。胎児診断例の疾患の種類・重症度、早産児の在胎期間は EPC 機能に影響する可能性が高いため結果解析には症例数の蓄積が必要であるため、現在も症例を集めている最中であり、結果の解析は今後行う予定である。また、上記26例について血漿を凍結保存し、VEGF, SDF-1などの血漿濃度の測定などに備えている。肺組織については、死亡例、手術例が非常に少なく、現在のところ症例が得られておらず、現在も症例の収集を続けている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成25年度から26年度にかけて、肺発達障害の成因による in vivo におけるEPC 機能への影響を調べる予定としていた。肺発達障害を生じる胎児疾患における EPC に関する前研究はほとんどなく、EPC 機能 が正常児に比べどの程度障害されているかを予測することができないため、その差を検出するため、研究のために必要な症例数の計算は困難である。従って、症例数を蓄積しながら、EPC 機能に関する実験を行い、途中経過で得られる結果から、必要症例数を算出する計画としている。本研究は、国立成育医療研究センターにおける単施設での研究ではあるが、胎児診断症例が全国から集積される施設であり、横隔膜ヘルニア、肺嚢胞性疾患、先天性胸水、先天性腎疾患など肺低形成を来しうる胎児疾患は2008年から2011年の3年間では約60例程度経験しているため、本研究の研究期間(平成25年から27年)に十分な症例数を得ることは可能である。 平成25年度は肺低形成を生じる胎児疾患症例 11例で臍帯血を得ることができ、臍帯血EPC 定量、ECFC の分離・培養・凍結保存、臍帯血血漿の保存を行うことができた。本年度は研究の初年度で、12月までは実験系のセットアップなどの準備に費やす必要があったため、実質約4ヶ月で上記症例数を確保できたため実験計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は以下に関する研究の実施を計画している。 1.肺発達障害の成因による in vivo における EPC 機能への影響。(平成25年度からの継続) 2.肺発達障害の成因による in vitro における EPC 機能への影響。肺低形成を生じる胎児疾患診断症例の臍帯血から ECFC を分離・培養し,in vitro における増殖能を growth assay または BrdU incorporation などを用いて、遊走能を Boyden chamber 法や wound healing assay を用いて、分化能 を tube formation assay を用いてコントロールと比較する。また、flow cytometry または western blotting を用いて ECFC における VEGFR-2、eNOS、CXCR4 発現を比較する。 3.肺発達障害の成因による EPC 機能への影響と呼吸器症状の重症度や予後との相関。肺低形成を生じるヒト胎児疾患診断症例の臍帯血中 EPC 数、VEGF、SDF-1 濃度、肺組織中 の EPC 数、VEGF、SDF-1 発現、in vitro での ECFC 増殖能、遊走能、分化能、VEGFR-2、eNOS、 CXCR4 発現などと、早期新生児死亡、新生児死亡、死亡退院、生存退院、人工呼吸期間、酸素投与期間、在宅酸素療法、在宅人工呼吸など呼吸器症状の重症度や予後との相関を、出生後の合併症の影響も考慮し、単変量解析、多変量解析を用いて調べる。 4.EPC 移植による新生児肺発達障害予防・治療効果。ヒト臍帯血から分離、培養した ECFC を、肺低形成動物モデルや新生児肺発達 障害動物モデルに移植することにより、肺発育障害の予防または治療効果が得られるかどうかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究はほぼ予定通りに進捗している。今年度繰り越し経費が約3万円ほど発生したが、これは、本研究が完全には発生が予測できない臨床検体を扱うため、検体数が予測とわずかに異なったことにより発生したものであり、全体の研究進捗への研究はなく、次年度に速やかに計上する予定である。全体として今後も計画に沿って研究を進めていく。 細胞培養に必要な培地、培養皿などの試薬、消耗品 flow cytometryをはじめとした各種細胞機能解析のための試薬など
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