研究課題/領域番号 |
25670496
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
辻 ひとみ 旭川医科大学, 医学部, その他 (50400106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | SLURP-2 / 尋常性乾癬 / 脂肪細胞 / 肥大化 / アディポサイトカイン |
研究概要 |
SLURP-2 (secreted Ly-6/uPar related protein-2)は、尋常性乾癬皮疹部で有意に発現亢進している分泌蛋白で、表皮角化細胞のみならず脂肪細胞においても発現している。近年、尋常性乾癬とメタボリック症候群との関連性が明らかになったことから、脂肪細胞の乾癬病態形成における作用について解明をすすめるため、①SLURP-2の脂肪細胞における増殖、分化、肥大化およびそれに伴うアディポサイトカインの発現への関与の有無を明らかにし、②脂肪細胞の肥大化を起点とした乾癬表皮形成の可否について表皮角化細胞3次元培養を用いて検討し、乾癬の病態および肥満における難治化の機序を明らかにする事を目的とする。 ①を明らかにするため、SLURP-2/FLAG発現ベクターを作製し、ヒト皮下脂肪由来前駆脂肪細胞に遺伝子導入し、分化培地を用いて脂肪細胞への分化誘導後、正常脂肪細胞とSLURP-2/FLAG遺伝子導入細胞における脂肪細胞の肥大化およびアディポサイトカインの発現について、位相差顕微鏡像およびRT-PCRを用いて比較検討した。肥大化について、脂肪滴の直径で検討したところ、SLURP-2/FLAG導入脂肪細胞では、正常脂肪細胞に比べ増大していることが認められた。また、RT-PCRの結果、SLURP-2導入脂肪細胞では、アディポネクチンの発現抑制およびIL-6の発現亢進が認められた。これらの結果から、SLURP-2が脂肪細胞の肥大化を誘導する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験に必要なSLURP-2量を得るために、SLURP-2安定形質発現細胞の作製を試みたが、困難を極めたため、研究が遅延した。十分量が得られないため、遺伝子導入実験に変更し実験を試行したところ、使用した導入試薬の細胞毒性による細胞死が認められ、導入への条件検討に時間を要したことも遅延の一因である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、残りの実験計画を完遂させるため、脂肪細胞と血球細胞との共培養を施行し、脂肪細胞からの乾癬表皮形成誘導の有無について、表皮角化細胞3次元培養での乾癬表皮形成がなされるかを中心に研究をすすめていく。脂肪細胞を起点とする炎症が血球細胞や表皮角化細胞にどのような影響を与えるか解明する。また、SLURP-2の発現抑制が前駆脂肪細胞や分化した脂肪細胞への影響の有無についても予定通り実験をすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
SLURP-2分泌蛋白を十分量得るために、同蛋白の安定形質発現細胞作製を正常表皮角化細胞および表皮角化不死化細胞で試みたが、困難を極めたため研究が遅延した。更に、好中球におけるIL-17の発現量がTh17を含む他の細胞より多いことが報告されたことから、T細胞のみでなく好中球も含めた脂肪細胞からの炎症を起点とした乾癬表皮形成の有無について検討することが必要となった。 SLURP-2誘導による脂肪細胞から発現されるアディポサイトカインの好中球への作用を検討すると共に、脂肪細胞を起点とした乾癬表皮形成の実験系を好中球も含めて検討する予定である。これらに加え、SLURP-2発現抑制による脂肪細胞への影響についてなど、遅延している実験の経費として使用する予定である。
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