患者自身から作製した3次元培養表皮(3D表皮)、患者自身の末梢血単核球(PBMC)そして被疑薬を反応させることで、中毒性表皮壊死症(TEN)やスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)のin vitroモデルの作製を試みた。患者は症例1(ゾニサミドによるSJS)、症例2(アロプリノールによるTEN)、症例3(アセトアミノフェンによるTEN)の3人の協力を得た。 患者自身の抜去した毛包由来の角化細胞を用いて3D表皮を作製することが出来たため、まずは症例1でモデルの作製を試みたが表皮傷害は確認できなかった。その原因として、末梢血中に被疑薬に反応するリンパ球が少ないことが予想されたため、被偽薬に反応するPBMCを増やす方法を検討した。 その結果、症例1のPBMCをIL-7存在下で培養することで、被疑薬に反応するPBMCの増殖が確認できた。そこで、他の症例(症例2、3)も同様に検討したが、症例2ではアロプリノールには反応しないが、代謝産物のオキシプリノールには反応することが分かったものの、症例3ではアセトアミノフェンおよびその代謝産物のN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンにも反応が見られなかった。このことから、薬疹患者ではPBMCが被疑薬や代謝産物に反応する場合だけでなく、被疑薬・代謝産物に加えて他の因子(物質、細胞等)も関与している場合も考えられた。 最終的に、症例1について再度モデルの作製を試みた(予めPBMCをIL-7存在下で増やした後、3D表皮と被疑薬に加えて反応)が、残念ながら表皮傷害は確認できなかった。その結果より、TENやSJSの表皮傷害は活性化したリンパ球だけでは起こらず、他の要素(物質、細胞)も必要であることが示唆された。
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