研究概要 |
ハンセン病は日本に於いては過去の疾患となりつつあるが、世界的には依然として毎年25万人が発症しており、有効な感染防御ワクチンの開発が望まれている。我々はこれまで、らい菌が鼻粘膜上皮細胞を標的として感染する事、及びその分子機構を明らかにしてきた。本研究の目的は、これらを踏まえ本研究をハンセン病の感染予防およびワクチン開発への基礎的検討の最終段階と位置づけ、らい菌の鼻粘膜細胞への侵入ペプチドの各部位を標的とした各種抗体を用いて侵入抑制効果を検討するところにある。 これまでの研究結果から想定された侵入活性領域(316~531bpの領域)を316-387bp (106-129A.A.), 388-453bp (130-151A.A.), 454-486bp (152-162A.A.), および487-531bp(163-177A.A.)に4分割して、夫々の領域に対する高度免疫血清を作製した。ペプチド合成を含む抗原精製に時間を要し、研究はやや遅れているが、4領域に対する抗体価の高い免疫血清を得る事ができた。316~531bpの全侵入活性領域を外膜表示した組み換え大腸菌を用いて、130―151アミノ酸を免疫原に作製した高度免疫血清の鼻粘膜細胞への侵入抑制効果を検討した結果、87-94%(抑制率)の侵入抑制効果が認められた。現在、残る3領域についても順次侵入抑制効果を検討中である。平成26年度は、高度免疫血清にて侵入抑制効果が認められたペプチド領域に対する単クローン抗体を作製しつつ、実際にらい菌を用いて侵入抑制効果を検討する予定である。
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