研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、ヒト悪性黒色腫による免疫抑制のメカニズムを、siRNAやシグナル阻害剤などを含む各種薬剤ライブラリーなどを用いて、網羅的なデータ駆動型研究による解明を目指す。本年度は、ヒト悪性黒色腫からの免疫抑制性サイトカイン産生に関与するキナーゼをsiRNAライブラリーを用いてスクリーニングし、複数のキナーゼ候補を同定した。また、保有する天然化合物ライブラリーを用いて、ヒト悪性黒色腫細胞からの免疫抑制性サイトカインの産生を抑制する複数の化合物を同定した。さらに、ヒト悪性黒色腫に作用すると、悪性黒色腫特異的T細胞からのインターフェロンガンマ(IFN-g)産生を増強させる化合物、すなわち抗悪性黒色腫特異的T細胞の効果増強が期待できる化合物を探索するために、ヒト悪性黒色腫抗原MART-1特異的なT細胞受容体遺伝子を導入して作製したヒト悪性黒色腫特異的T細胞を用いるスクリーニング系を構築した。その方法を用いて、MAPK経路阻害剤は、悪性黒色腫細胞での腫瘍抗原の発現増加を介して、悪性黒色腫特異的T細胞からのIFN-g産生を増強することが判明した。そこで、本スクリーニング法を用いて、約400の抗腫瘍化合物や天然化合物、さらに新たに取得した約1000種の既存薬ライブラリーを用いて、抗腫瘍T細胞のサイトカイン産生を増強させる化合物の探索と標的の検討を開始した。次年度は、これらin vitroスクリーニングの継続ともに、マウス腫瘍モデルを用いて、同定した化合物のin vivo での抗腫瘍免疫応答制御作用を検討予定である。
2: おおむね順調に進展している
ヒト悪性黒色腫からの免疫抑制性サイトカイン産生に関与するシグナル伝達分子、およびサイトカイン産生を抑える化合物がスクリーニングにより複数同定された。ヒト悪性黒色腫細胞の培養上清が樹状細胞機能を低下させるのに関与するシグナル伝達分子候補が同定された。新たにヒト悪性黒色腫のT細胞感受性を増強する化合物をスクリーニングする方法を開発し、MAPK経路阻害剤が一候補として同定された。
次年度も各種スクリーニングを継続し、免疫制御のための標的候補の同定と、免疫制御作用をもつ化合物候補の探索を進める。さらに、同定された候補化合物を用いて、抗腫瘍免疫応答の測定が簡便にできるマウス腫瘍モデルを用いて、in vivoでの免疫制御作用を検討する予定である。
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