研究課題
挑戦的萌芽研究
悪性黒色腫はさまざまな臓器に転移する性質を持ち、化学療法も効き難いため予後が極めて悪い腫瘍である。そのため、悪性黒色腫に対する新規治療法の開発が必要とされている。本研究では独自に開発した細胞表面膜タンパク質に対する定量的なプロテオミクス解析を悪性黒色腫に対して行うことにより、抗体医薬品開発の標的となる抗原タンパク質を同定することを目的とした。さらに、癌抗原に対するモノクローナル抗体を開発し、悪性黒色腫の肺転移モデルマウスに対して、抗体を用いて悪性黒色腫の遠隔転移モデルに対する抗腫瘍効果をin vivoイメージング装置を用いて定量的に解析することで証明することとした。本年度において、悪性黒色腫細胞株として、A2058、G361、Mewo、 SK-MEL5、SK-MEL28、VMRC-MELG、WM266-4、コントロール細胞として、メラノサイトを用いて細胞表面膜タンパク質のビオチン標識とアビジンビーズによる濃縮、トリプシン消化した後、iTRAQ試薬によるペプチドの標識と質量分析計による測定により、各種細胞における膜タンパク質の網羅的な定量解析を行った。その結果、491種類のタンパク質を同定し、114種類(23.2%)の膜タンパク質が含まれていた。同定されたタンパク質の中にはEGFRやHGFRなど増殖因子に対する受容体も含まれていた。その他に、悪性黒色腫に対する新規癌抗原候補分子が数種類検出されていた。現在、iTRAQ解析により得られた発現変動をしめす悪性黒色腫における新規癌抗原候補分子についてウェスタンブロット法などの手法で検証している段階である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、iTRAQ法を用いて7種類の悪性黒色腫細胞株、および、メラノサイトの細胞表面膜タンパク質を網羅的に定量解析することにより、悪性黒色腫に対する複数の新規癌抗原候補タンパク質を同定した。同定されたタンパク質の中には、他の腫瘍で承認済みあるいは治験が実施されている抗体医薬品の標的分子であるEGFRやHGFRなど増殖因子に対する受容体も含まれており、本解析手法が癌抗原の探索に適していることが示唆された。現在、探索から検証の段階に移行しており、候補タンパク質が癌抗原として検証できればモノクローナル抗体の開発へ進める。
iTRAQ解析により同定された悪性黒色腫に対する新規癌抗原候補タンパク質について、メラノサイトと比較し悪性黒色腫にて高発現する事をウェスタンブロット法により検証する。細胞株レベルで悪性黒色腫に高発現が検証されたタンパク質については、免疫組織化学染色が可能な市販抗体が入手可能な場合は免疫組織化学染色法により悪性黒色腫の手術組織に対して新規癌抗原候補タンパク質が高発現する事を検証する。その後、候補タンパク質に対するモノクローナル抗体の開発に着手する。独自に開発したモノクローナル抗体については、表面プラズモン共鳴(SPR)測定により、nMオーダーの解離定数を示すクローンを選別する。さらに、新規癌抗原候補タンパク質に対するモノクローナル抗体について、免疫不全マウスの皮下に移植した悪性黒色腫のゼノグラフトモデルに対する抗腫瘍効果をコントロールIgGと比較することで検証する。
発注予定であった薬品の在庫がなかったため。薬品は納品済みのため研究計画に沿って使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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