研究課題/領域番号 |
25670509
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 正人 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20221533)
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研究分担者 |
高橋 啓介 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20455984)
武井 雄一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30455985)
成田 耕介 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70345677)
青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351)
須田 真史 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30553747)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 脳神経疾患 |
研究概要 |
社会的な存在である人間にとって、対人関係は基本的な生活要素であるが、対人関係を対象とした従来の「社会脳」研究は被検者が1人の状況で行われており、実際の対人関係を検討したものではない。そこで本研究では、対面座位という自然な状態で脳機能が測定できる近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS) の利点を生かし、実際に対人行動を行なっている最中の脳機能画像を2人同時に測定する検査法を確立し(two-person neuroscience)、そこで得られる結果を精神疾患における対人行動障害の脳基盤の解明とその改善に応用することを目的とした。 そこでまず、対人行動を評価するための具体的なNIRS検査法とそのデータの解析法の確立を行った。検査法としては、対面して座っている検査者の1人と、一定の話題について自由な会話を15秒交代で6往復行うように求める(合計180秒)という対人行動課題が適切であり実施可能であることが確認できた。この課題を用いて統合失調症について検討を行ったところ、左側頭部の脳賦活は陽性陰性症状評価尺度the Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS)で評価した不統合症状と負の相関を、右下前頭部の脳賦活はPANSSの陰性症状や不統合症状および罹病期間と負の相関を示すことが明らかになった。 データ解析法については、こうした単一被検者のデータ解析だけでなく、会話を行っている2名のデータのペアについて脳賦活の関係を波形相関として検討する方法を試みた。2名の脳賦活の相関を、脳部位ごとに会話の時間経過にそって、しかも会話の設定条件に依存した形で明らかにすることができた。 このようにして、two-person neuroscienceを確立するうえでのNIRS検査法とデータ解析法を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の神経科学における「社会脳」研究は被検者が1人の状況で行われており、実際の対人関係を検討したものではない。これは、現実の対人関係をそのまま検討できる脳機能画像法が存在しなかったためである。対面座位という自然な状態で脳機能が測定できる近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS) の利点を生かし、その制約を乗り越えて実際に対人行動を行なっている最中の脳機能画像を2人同時に測定する検査法とデータ解析法を確立することができたことで、two-person neuroscienceの基盤を確立することができた。さらにその方法論を、対人関係の病とされる統合失調症に応用し、臨床的にも有用な結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はtwo-person neuroscienceという学問分野を開拓していくうえで必要となる、NIRS検査法とデータ解析法の基礎を確立し、それを精神疾患のひとつである統合失調症に適応して臨床的に有用な結果を得ることができた。今後は対象をうつ病・双極性障害・広汎性発達障害に拡大することを予定している。さらに、初対面の相手との会話のみならず、家族や友人や医療者との会話などより日常生活に近い状況でのNIRS検査が可能であるかどうかの検討を行っていく。その結果にもとづいて、人間の精神活動の本質的な側面を明らかにできるtwo-person neuroscienceを発展させていくことを予定している。
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