研究課題
挑戦的萌芽研究
京都大学霊長類研究所の今井啓雄准教授から提供を受けたニホンザルの末梢血由来ゲノムを用いてcomparative genomic hybridization法(CGH法)で全ゲノムCNV解析を実施した。解析対象のニホンザルは数十年間系統維持され、系統ごとに家系図が保存されている。H25年度は100頭以上のニホンザルのCNV解析を終了し、頻度もサイズも異なる多様な欠失・重複を同定した。一部のCNVは出身地あるいは家系に特異的な変異であった。同定したCNVの例として、4Mbを超える大規模重複(数多くの遺伝子が含まれる)、10番染色体の600kbの重複、BDNF遺伝子を含む領域の重複、NGF遺伝子を含む領域の欠失が含まれる。10番染色体の重複は、相同領域のヒト22番染色体の重複が統合失調症患者で複数同定されている。これらの例のように、中枢神経系の発達に重要な役割を果たす遺伝子や精神疾患との関連が報告された遺伝子に機能的影響を及ぼすCNVを見出した。同定したCNVの一部は、さらに解像度の高いCGH法で再現性の確認を行った。今後は解析サンプルの数を増やし、さらに精神疾患に関連したCNVをもつニホンザルを見つける。同時に、精神疾患に関連したCNVを有する個体には、オープンフィールドテストや社会相互作用の評価、認知機能テスト、MRI等を用いた脳構造の評価を実施し、その個体が精神疾患モデルとしての妥当性を有するかを検証する。
1: 当初の計画以上に進展している
H25年度は100頭以上のニホンザルを対象に全ゲノムCNV解析を実施した。10番染色体の重複、BDNF重複、NGF欠失など精神疾患との関連が報告された遺伝子にCNVを見出している。これらCNVをもつニホンザルは精神疾患モデルになる可能性があり、次年度に表現型解析を実施する予定である。なお、同定したCNVの一部は再現性の確認も行っており、データの質も高いと考えられる。以上から、当初の計画以上に進展しているといえる。
サンプル数を増やし、ニホンザルの全ゲノムCNV解析を継続し、精神疾患に関連した遺伝子や神経発達において重要な働きをする遺伝子のCNVを同定する。同定したCNVは高解像度CGH法で再現性を確認する。上述のCNVをもつ個体を対象に表現型を詳細に調べ、CNVが行動・認知機能に与える影響を明確化し、精神疾患モデルとしての妥当性を検証する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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