研究概要 |
統合失調症は、一旦顕在発症すると予後がよくない場合が現在でも少なからずある。しかし、発症前駆期においては将来の転帰(自然寛解するのか、あるいは顕在発症に至るのか)について判断が難しいのが現状である。この意味でも、統合失調症の有用なバイオマーカーが必要とされる。我々は、脳と同じ外胚葉由来の頭髪の毛根に着目し、遺伝子発現を調べた。”Discovery sample set”として、統合失調症52人、対照群約62人の毛根サンプルを収集しRNAを抽出した。これらのサンプルを用いて、TaqManによる定量的RT-PCR法で遺伝子の発現量を測定した。なお、毛髪は1人あたり10本採取させていただいた。GeneChipを用いたmRNAの網羅的発現解析では、これらの検体からはRNAの量が不十分であるので、以下の標的遺伝子を選択して調べた。(1)GABA系関連遺伝子:GAD1, GABRD, GABRA1, SLC6A1, GAD2, SST, PVALB, CALB2、(2)オリゴデンドロサイト系関連遺伝子:MAG, CNP, SOX10, CLDN11, PMP22, CSPG4 (NG2), OLIG2、(3)脂質関連および他の遺伝子:FABPファミリー遺伝子, FAAH, APC, BDNF, NES, SLC16A1 上記のうち、CNP, PMP22, FABP4, FABP7で疾患群と対照群で有意差が見られた。 次に、”Confirmatory sample set”として、年齢・性別をマッチさせた統合失調症42人、対照群約55人の独立した毛根サンプルを収集し、”Discovery sample set”で有意差のあった4遺伝子の発現量を比較した。その結果、FABP4遺伝子のみが2つのサンプルセットで有意差を持って統合失調症群で発現量が予約半分に減少していた。
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