研究課題
昨年度までの結果で、統合失調症では毛根中のFABP4遺伝子の発現量が対照群に比較して約1/2に減少していることを、Discovery sample setおよびConfirmatory sample setで確認したことに基づき、今年度では(1)交絡因子の影響、(2)毛髪以外の検体でのFABP4発現量、を調べた。(1)に関しては、FABP4遺伝子の発現量は、年齢、投薬量、発症後の時間、体脂肪率の影響を受けないことが判明した。判別マーカーとしての特性は、ROC曲線解析から感度=71.8%、特異度=66.7%、陽性的中率=60.9%、陰性的中率=76.6%と算出された。FABP4遺伝子の発現量が年齢や疾患顕在発症後の時間経過に影響されないという事実は、判断が難し統合失調症の前駆期での診断の補助になり得ると考えられた。(2)に関しては、死後脳前頭葉で疾患群で有意な発現量の増加、海馬では有意差なしという結果であった。統合失調症由来のiPS細胞ではFABP4遺伝子の発現は検出できなかった。iPS細胞から分化誘導したNeurosphere (神経前駆細胞塊)では発現は認められたが、疾患群と対照群の間で発現量に有意な差はなかった。以上のように、FABP4は脳の発達期から神経系の細胞(神経前駆細胞)に発現しており、死後脳では 前頭葉で疾患と対照群の間に発現レベルに差があるので、単なるバイオマーカーを 超えて、疾患の病理に関係している可能性があると考えられる。なおmicroRNA (miRNA)の解析では、miR4449の発現量が統合失調症由来の毛根で増加傾向、死後脳前頭葉で有意な増加、iPS細胞で増加傾向、Neurosphereで有意差なし、という結果であった。
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