研究課題/領域番号 |
25670521
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
本多 真 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (50370979)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不眠 / ナルコレレプシー / 脂肪酸代謝 |
研究概要 |
中途覚醒型不眠の代表例としてうつ病とナルコレプシーがある。ともに背景としてレム睡眠発現異常の関与が想定される。ナルコレプシーではレム睡眠と覚醒の頻回の相移行が睡眠維持障害をきたすと考えられる。本年度、多数のナルコレプシー症例について横断的解析をすすめ、頻回の中途覚醒が脂肪酸β酸化異常、特にCPT1機能低下と関連することを確認した。対照群および近縁過眠症群ではこの関連は見いだされなかった。またナルコレプシー群ではCPT1Bの機能変化をひきおこすSNP rs5770917と、CPT1機能低下が関連することを見出したが、このSNPの多型が、中途覚醒回数と独立して関連する因子とは確認できなかった。 主観的な中途覚醒報告に基づく解析では、微細な変化の検出が難しい可能性があることと考えられたため、睡眠脳波の解析により、レム睡眠と覚醒の相移行を検出する方法の検討を行った。通常の睡眠ポリグラフ検査では本人が自覚しないものを含め脳波上の覚醒反応数をarousal としてカウントするが、これは中途覚醒型不眠とは必ずしも一致しない。そこで主観的睡眠感と関連し、睡眠相の安定化の指標として、慢性疲労症候群の睡眠異常の検出に有用と報告されている「睡眠ステージ遷移確率」を用いて、ナルコレプシー3例の睡眠脳波を測定し同時に採血を行って脂肪酸代謝指標の測定を行った結果を、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
横断的な研究と解析により当初の仮説についての検証は計画以上に進行し、血中脂肪酸代謝指標が対照群では年齢およびBMIによって変化することを見出した。しかし当初の作業仮説のうち、中途覚醒数と脂肪酸代謝異常との関連はナルコレプシー群のみでの確認となった。そこで研究方法を再検討し、主観的な睡眠評価と関連する「睡眠ステージ遷移確率」を指標とした解析方法を導入し、さらに実際に睡眠脳波検査を行うと同時に採血するPilot studyを行った。その結果は現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
終了したばかりのナルコレプシーを対象とするPilot studyについて、睡眠脳波検査と平行して採取した血中脂肪酸代謝指標についての関連解析を進め、中途覚醒と脂肪酸代謝との関連について検討を行う。Pilot studyのような症例の入院を伴う睡眠脳波検査は、施設人員の確保や被験者をふくむ日程調整に困難があるため、症例数を増やすため、在宅での簡易型の睡眠脳波検査と同日の血液採取を行う臨床研究について、倫理審査委員会の承認が得られ次第、開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究仮説と異なる解析結果が得られたため、より詳細な検討が可能な睡眠脳波を含むpilot studyを行うこと、また通常の睡眠変数以外の睡眠脳波解析方法を採用するといった点で、当初計画より若干の研究の遅れが生じているため。 ナルコレプシー3例の睡眠脳波測定と同時に採取した血液サンプルについて脂肪酸代謝指標の測定の解析を行い、その結果と「睡眠ステージ遷移確率」で評価された夜間睡眠安定化指標との関連解析を進める。 また別途企画される簡易型脳波計を用いた多数例の臨床研究の際に、睡眠検査時点での採血を行い、血中脂肪酸代謝指標の算出を進めつつ、得られた睡眠脳波の解析を行って夜間睡眠(特にレム睡眠)の安定性と脂肪酸代謝指標の関連検討を行って、結論を得る。
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