研究課題
我々は、αシヌクレイン蛋白を検出する新規PETプローブの実用化を目指して、プローブ候補化合物の探索と結合性評価を進めてきた。今年度は、これまでのスクリーニングでαシヌクレイン蛋白への結合親和性に優れていると考えられた低分子化合物Compound Cを18Fで放射性標識し、その結合性と脳内動態に関する詳細な評価を行った。まずパーキンソン病患者の中脳切片を用いて[18F]Compound Cでオートラジオグラフィーを実施した結果、レビー小体が密に沈着する黒質付近において、プローブの特異的な結合像が確認された。また[18F]Compound Cのαシヌクレイン線維への結合親和性を結合アッセイ系を用いて定量的に評価したところ、Kd値は21.6 nMであり、過去に報告されているαシヌクレイン画像化用プローブの候補化合物よりも高い結合親和性を示すことが判明した。さらに本プローブの脳血液関門透過性を調べるため、正常マウスに[18F]Compound Cを静脈内投与したところ、投与2分後の段階で十分な脳への移行が観察された。さらに外科的処置によりラットの脳内にαシヌクレイン凝集塊を注入したモデル動物を作製し、Compound Cを静脈内投与したところ、化合物の脳内αシヌクレイン凝集塊への選択的結合像を観察することができた。以上の結果から、Compound Cはαシヌクレイン蛋白への結合性と脳血液関門透過性を兼ね備えており、αシヌクレイン蛋白を生体画像化するためのPETプローブの有力候補であると考えられた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
Curr Neurol Neurosci Rep
巻: 14 ページ: 500
10.1007/s11910-014-0500-6
Brain
巻: 137 ページ: 1762-1771
10.1093/brain/awu064
Eur J Nucl Med Mol Imaging
巻: 41 ページ: 816-826
10.1007/s00259-013-2681-7