研究課題/領域番号 |
25670530
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
富樫 かおり 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90135484)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 肺野CT / 経時変化 / 非線形レジストレーション / LDDMM / Jacobian map / 差分画像 |
研究概要 |
経時変化を伴う肺野CT画像のレジストレーションを実施する原理として、微分同相写像間の変形を示すベクトル場を Euler-Lagrange方程式を応用して求めるLarge Deformation Diffeomorphic Metric Mapping(LDDMM)法を基にして、これを躯幹部に適応可能な形にアルゴリズの改良を実施した。 肺の形状は吸気状態により大きく異なるため、時系列画像間の変形・変化が大きく剛体として取り扱うことができない。そこで最初に全体的なレジストレーションを行い、その後局所のレジストレーションへと段階的に実施するアルゴリズムを適用して、その妥当性を検討した。その際、高精細のCT元画像のデータ量は非常に大きく、胸部全体の画像をそのまま処理することはコンピュータの処理能力・所要時間の点から困難であることが判明した。そこでLDDMM法を適用する前段階で行うべき処理を検討、実行可能な処理時間に収めることができた。 これらの成果を活用して実際に処理を行い、肺野の経時変化は変形量を記述するJacobian mapとして、病変の出現・消失の記述にはレジストレーション前後の差分によるdifferential mapとして検出可能であることがわかった。ただし気管支閉塞による末梢肺炎のように本来の構造が消失する場合には処理に失敗する場合があることも分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経時的に撮像された肺野CT画像をLDDMM法を用いて非線形レジストレーション可能とし、差分画像により病変の出現・消失を、Jacobian mapによりサイズ変化を客観的に描出可能とした。これにより平成25年度計画をほぼ初期の目的通り達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、まず肺野病変を有する複数症例を対象として、その有用性の検討を進める。またLDDMM法によりCT画像の経時変化を評価する対象を他臓器へと広げる方法を検討する。 後者については、肺野と同様に組織間コントラストが高い構造としては骨が挙げられる。CTでも骨転移巣は溶骨性もしくは骨形成性病巣として捉えることは不可能ではないが、通常の診療ではCT評価の対象は主として軟部組織濃度を示す実質臓器である。骨の評価には実質臓器とは異なる表示条件に変更の上で、広範囲を再度視覚的に確認し無くてはならない。そのため診療を支援可能なレベルのレジストレーション精度と変化の検出能を目指す。 ただしガンの全身骨転移を対象とする場合には、肺野よりも広範囲を対象とした解析が必要となる。現時点では躯幹部を分割して処理する方法が有力であるが、非線形レジストレーションを行うため、分割した領域の境界部分におけるレジストレーションの整合性が問題となる。また肺野では空気と腫瘍や正常組織とのコントラストが高く、レジストレーションが比較的容易であった。骨のコントラストは高いため同様の精度が期待されるが、事前処理やLDDMM法適用の最適化を検討する。 実用レベルに達した場合には、当研究施設が有する多数の疾患・症例を対象とした解析を行い臨床の場において評価・検討を行うことで、躯幹部CT画像の経時変化検出能を改善するとともに、適用可能な領域を明確化して病態変化に関する研究を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度計画は当初の予定どおり実施出来たため、結果としてLDDMM法を用いたアルゴリズムの詳細な検討のために米国Johns-Hopkins大学(JHU)で研究を実施せずに済ませることができたため。 H26年度はこれまでに検討はしていない新たな領域への適用であり、JHU現地でのLDDMM法適用とアルゴリズム改善の研究を行うとともに、より処理能力の高いワークステーションを導入することで遅滞なく研究を遂行する予定である。
|