研究実績の概要 |
本研究は微分同相写像間の変形を示すベクトル場を Euler-Lagrange方程式を応用して求めるLarge Deformation Diffeomorphic Metric Mapping(LDDMM)法を基にしたものである。これを躯幹部に適応可能な形にアルゴリズの改良を実施、肺野の経時変化量をJacobian map、病変の出現・消失をdifferential mapとして検出可能としたものである。 本年度は研究代表者の指導の元で本研究を行っている大学院生・坂本をアルゴリズム開発者JHU大学Miller教授のもとに派遣してその改良を続けるとともに、これを肺ガン症例に適用してその性能を検証した。結果、気管支分岐部などランドマークを指標として位置合わせの誤差を評価したところ、従来法とLDDMM法とを比較して近位部では3.11±2.47mmに対して0.02±0.16mm、遠位部では3.99±3.05mmに対して0.12±0.60mmといずれも有意に改善されていることが示された。さらに腫瘍のサイズ変化や出現・消失を的確に捉えられていることが確認された(Sakamoto R, et al. PLoS One. 9:e85580, 2014)。 肺ガンをスクリーニングする目的で行われるCT検査では、5mm以下の小結節を有する場合が多く、そのほとんどが良性である。一方でvideo-assisted thoracic surgery対象症例の38%では肺ガンの大きさは1cm以下との報告がある。腫瘍が倍増するのは平均で181日とする報告はあるが個人差が大きく、CT検査が頻回となる場合も多い。本手法は小病変も含めてその変化を客観的に捉えることを可能とするものであり、肺ガン診療に大きく貢献すると考えられる。
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