研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、膵β細胞に発現するGlucagon-like peptide-1 receptor(GLP-1受容体)、G-protein-coupled receptor 40(GPR40受容体)、Sulfonylurea receptor 1(SUR1受容体)に特異的・選択的に結合するPET/SPECT用分子イメージングプローブを開発し、それを用いて移植膵島早期の肝臓内における膵島の画像化およびその生着率の確認、再移植のタイミングを決めるための非侵襲的核医学イメージング法を構築することである。今年度は、候補化合物の設計・合成とその基礎評価を中心に行った。具体的には、GLP-1受容体を標的とするプローブとして、Exendinを母体とした111In標識体を開発した。正常マウスを用いたインビボ評価では、特異的に膵β細胞に集積していることが明らかとなった。今後は、膵島移植モデル動物を用いた評価を実施する。GPR40受容体を標的とするプローブとして、GW9508、TUG-424に着目し、数種の誘導体の合成を実施した。今後は、インビトロ、インビボの評価を進め、化合物の絞り込みを行う。SUR1受容体を標的とするプローブとして、Mitiglinideを母体とした18F標識体を開発した。開発した(+)-(S)-o-[18F]FMIT は、インビトロ評価よりSUR1受容体に対して親和性を有していた。更にEx vivo Autoradiographyの結果より、(+)-(S)-o-[18F]FMITは膵β細胞に集積していることが示された。今後は、膵島移植モデル動物を用いた評価を実施する。
2: おおむね順調に進展している
GLP-1受容体、GPR40受容体、SUR1受容体を標的としたPET/SPECT用分子イメージングプローブとして、数種の候補化合物の設計と合成を実施することが出来た。特に、GLP-1受容体、SUR1受容体に対してはインビボの評価まで実施することができ、膵β細胞イメージングの可能性を見出すことが出来た。GPR40受容体に対しては数種の母体化合物をから誘導化を進めており、近い内にインビトロ、インビボの評価を実施する目処が立っている。前述の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
開発したイメージングプローブのインビボスクリーニングを中心に研究を進めて行く。具体的には、正常マウス、ラットにプローブを投与して経時的に屠殺し、各臓器の重量および集積した放射能を測定する。肝臓への集積性、血液肝臓比を指標に、イメージングを行うのに適した動態を示すプローブの選別を行う。また、非標識体を投与するインビボブロッキング実験を行うことで、プローブの標的特異性を評価する。β細胞特異的集積が示されたプローブについて、PETあるいはSPECTでイメージングを行い、移植膵島が描出可能かどうかを検討する。スクリーニングで得られた構造活性相関の反映、効率的合成法の確立などにより、各プローブの最適化を図るとともに膵β細胞数の非侵襲的定量解析法の開発を行う。最適化されたプローブを正常動物、糖尿病モデル動物に投与して経時的にPET/SPECTイメージングを行い、移植膵島への放射能集積の経時変化を追跡する。さらに血中代謝物分析を行い、血中に存在する未変化体プローブの経時変化を追跡する。PET/SPECT撮像条件、吸収補正、画像再構成法、部分容積効果等、種々の撮像条件を最適化・標準化し、SPECTの信号強度を膵β細胞量と関連付けることのできる回帰式を見出し、膵β細胞のインビボ定量化を達成する。以上の研究を通じ、膵β細胞に発現するGLP-1受容体、GPR40受容体、SUR1受容体に特異的・選択的に結合するPET/SPECT用分子イメージングプローブを開発し、それを用いて移植膵島早期の肝臓内における膵島の画像化およびその生着率の確認、再移植のタイミングを決めるための非侵襲的核医学イメージング法を構築する。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry
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