研究課題/領域番号 |
25670537
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
藤井 博匡 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70209013)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イメージング / EPR |
研究概要 |
EPR (電子常磁性共鳴)イメージング法は、フリーラジカルの発生によって起こる様々な体内機能の変化を非侵襲的に視覚化する分子イメージング法の一手法である。本申請では、複数の常磁性プローブ分子を個別に識別し、複数分子から得られる生体機能情報を同一個体で非侵襲的に同時に画像化する、新しい“複数機能同時イメージング法の開発研究”に挑戦する。このような分子イメージング手法を使って病態モデル動物における生理機能解析を行うと、複数の生体機能情報(本研究では、酸素分圧やpH、薬理効果など)を、同一の動物で同時に取得することが可能となる。本手法を用いて非侵襲的に得られる生体機能情報は、病因の解明や治療薬の開発などの幅広い分野での活用が期待されている。 平成25年度はプロジェクト1での「2分子同時イメージングの動物実験での検証」研究を行った。現在、当研究室において稼働している小動物用高速イメージングシステムを利用して、動物体内に投与された複数種のイメージングプローブを、同一個体で同時に視覚化させる画像化を実施した。 2種類の分子を同時に画像化する手法:(1)ファントムによる検討;(a)窒素原子を同位体でラベル化した(14Nと15Nによるラベル化)2種類のニトロキシド分子からなるファントムを調整し、同時画像化を行う。14Nと15Nによりラベルされたそれぞれのニトロキシド分子のEPRスペクトル分離を(i)低磁場側の信号と中間信号との加算・減算処理による手法、あるいは、(ii)フーリエ変換法による分離法で実施し、両手法でのスペクトルの分離効率を比較し、分離された信号を用いて同時画像化を実施した。(b)ニトロキシド分子と1本線のスペクトルを示すプローブの組み合わせで同時画像化を実施した。撮像画像から、信号分離法として(i)か(ii)か、どちらが優れているか比較検討し、動物実験での検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の分子を同時に画像化する手法として、ファントムとマウスを用いた検討を実施した。 (1)ファントムによる検討;(a)窒素原子を同位体でラベル化した(14Nと15Nによるラベル化)2種類のニトロキシド分子からなるファントムを調整し、同時画像化を実施した。14Nと15Nによりラベルされたそれぞれのニトロキシド分子のEPRスペクトル分離を(i)低磁場側の信号と中間信号との加算・減算処理による手法、あるいは、(ii)フーリエ変換法による分離法で実施し、両手法でのスペクトルの分離効率を比較した。分離された信号を用いて同時画像化を実施したところ、選択すべき手法は用いるプローベの線幅に強く依存することが判明した。(b)ニトロキシド分子と1本線のスペクトルを示すプローブの組み合わせで同時画像化を実施した。撮像画像から、信号分離法として(i)か(ii)か、どちらが優れているか比較検討し、以下の動物実験用の基礎データとした。 (2)動物実験での実証;ファントム実験に続き、マウスによる動物実験での実証を実施した。2分子のニトロキシドプローブ(14Nと15Nでラベル化したニトロキシド化合物)をマウスへ投与し、マウス頭部でのイメージング画像を撮像した。14N化ナイトロオキシドと15N化分子の分布を視覚化したが、線幅の比較的細い重水素化したプローベでは両手法を採用しても同じ結果が得られた。プログラムの簡素化から(i)の手法がベターであるように思われた。また、ニトロキシド分子と1本線のEPR信号のプローブの組み合わせにおいても動物実験を行い、2分子同時画像化の試みを継続中である。 今年度は以上のような結果が得られた。申請時に記載した計画に沿って進められており、計画に沿った成果が出始めていると思われ、現在の達成度合度、進捗状況はおおむね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、プロジェクト1に引き続き、プロジェクト2の「複数生体機能情報の同時イメージング化の実証」研究を実施する。 プローベの開発:平成26年度の研究では、まず生体機能画像化を目指したニトロキシドレポーター分子の合成を行い、ファントムでの原理実証実験を行う。プローブの合成については、Khramtsov教授(Ohio State University)の指導で実施する計画である。同時画像化を目指す生体機能、利用予定のプローブ、そして画像化の可能性とその検討事項について、以下のとおりです。 動物実験での実証研究:ファントムによる試験を通過したプローブをマウスに投与し、複数の生体機能情報同時イメージングを実施する。申請者の開発した“高速EPRイメージング手法”を駆逐し、脳内外でのpH・酸素濃度の計測を同一個体で行い、各プローブからの機能情報を視覚化する試みを実施する。 炎症モデル動物の利用:組織内pHや脳内酸素濃度が正常マウスでの数値と大きく異なる例として、炎症モデル動物を用いた動物実験を予定する。炎症モデルマウスの脳内では血液脳関門が破壊されている可能性が有り、脳内へのプローブの透過を効果的に画像観測できる可能性がある。また、炎症組織への薬物集積状態の可視化研究も目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が17149円生じた。当初使用予定の薬品の変更によるものである。 生じた額は、H26年度の予算に組み入れて、薬品購入の一部として使用予定である。
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