本研究ではMRIにおいてデータ収集を一部しか行わず、残りのデータは収集されたデータから推測することにより撮像時間を短縮することを目的とした。「仮想データ」とはこの推測されたデータのことである。本研究にとって最も重要なのは、実際に収集されたデータからいかに正確に仮想データを求めるか、である。spiralやzigzagなどの特殊な軌道を使ってデータを収集した場合、アーチファクトの低下やSNRの上昇を観察できたものの、正確な画像のphaseを用いたとしても、再構成された画像で折り返しアーチファクトに類似したアーチファクトが残存した。これについては原因は判明しておらず、今後も引き続き解明に向けて検討を行う。 Dixon法から発展したIDEAL法では、少しずつ撮像パラメータの異なる複数の画像が必要である。この画像再構成法において、実際に撮像された少数の画像のphaseから他のパラメータで撮像された画像のphaseを推測することにより、最終的に作られる画像の質が改善するかどうかを見るため実験を行った。その結果、再構成された画像ではSNRが顕著に上昇し、アーチファクトの残存も見られなかった。これらの実験を通し、仮想データの概念を実用化する場合、どのような画像再構成法にこの概念を適用するか、それを見極めることも重要であることがわかった。仮想データの概念は理論的にはすべての画像再構成法に応用できると考えるが、実際にはアーチファクトを出現させずに顕著に画質の向上に寄与できるのは、一部の画像再構成法なのかもしれない。今後は、どのようなアルゴリズムにおいて仮想データの概念が役に立つのか、研究を続けて行く。
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