研究課題/領域番号 |
25670540
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
向 高弘 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30284706)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アミロイド / 蛍光色素 |
研究概要 |
本研究では、アミロイドーシス疾患鑑別の特異性向上を目的とし、異なるタンパク質に由来する線維に選択的な結合を示す蛍光色素を選別することを計画した。そこで蛍光色素としてチオフラビンT(ThT)およびその誘導体PPBTA-1のほか、共通構造としてベンゾチアゾール骨格を有するTZDMおよびTZDMIを用いた。TZDMIはThTの側鎖メチル基がヨウ素原子に置換されており、TZDMはそれに加えてベンゾチアゾール骨格中の正電荷を持たない。 血清アミロイドA(SAA)のN末端領域(1-27)からなるペプチドが形成する線維(SAA形成線維)あるいはAβペプチドが形成する線維(Aβ形成線維)に対して、各蛍光色素を異なる濃度で反応させた。また、蛍光色素の濃度に対して蛍光スペクトルの最大値をプロットした結合曲線より、線維と蛍光色素との親和性の指標となる解離定数(Kd値)を求めた。 ThT、PPBTA-1とは異なり、TZDM、TZDMIは遊離状態でも強い蛍光を発した。この結果は、電子求引性のヨウ素を側鎖に持つことで、効率のよい分子内電荷移動がおこったためであると推察される。一般に、蛍光色素の極性が低いと疎水性であるアミロイド線維との結合性が高いとされている。実際Aβ形成線維、SAA形成線維双方に対して小さいKd値を示した蛍光色素は電荷をもたないPPBTA-1であった。しかし、TZDMとTZDMIのAβ形成線維との反応においては親和性の違いはみられず、今後さらなる検討が求められる。またTZDMの場合、SAA形成線維と比較してAβ形成線維とのKd値が極めて小さくなった。すなわち、同じ骨格を有する蛍光色素においても、側鎖の構造を少し変化させるだけで結合選択性に違いが見られることが分かった。このことから、今後のアミロイド結合性蛍光色素デザインにおいて骨格だけでなく側鎖を変化させることも、疾患鑑別の特異性を向上させるために考慮すべき事項であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のアミロイド線維に結合を示すThTを基に、側鎖の構造変化、電荷の付与により、蛍光特性および線維との結合特性への影響について、初めての知見を得ることができ、その成果を第63回日本薬学会近畿支部大会にて報告した。これらの知見は、AAアミロイドーシスの原因タンパク質であるSAA線維に対して選択的に結合するプローブの構造要因の解明の一助になると考える。また、これらの研究を通して、ベンゾチアゾール誘導体の合成法や電荷の導入法を確立することができたことから、放射性標識プローブの合成を効率よく進めることができるものと期待している。なおプローブの骨格合成や電荷の導入法に関する成果については、日本薬学会第134年会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
チオフラビンT誘導体の結合特性の解析から、AAアミロイド線維に結合する構造を特定し、その構造を含むプローブを合成する。また、放射性核種として放射性ヨウ素を選択し、標識前駆体として、トリブチルスズ体を合成することとする。この前駆体を用い、スズ-ヨウ素交換反応により、放射性ヨウ素を導入し、HPLCにより分離精製し、注射液を製する。 合成した放射性標識体を緩衝液およびマウス血漿中にてインキュベートし、経時的にHPLCにて化学形を分析することにより、安定性を評価する。また、放射性標識体を健常マウスに投与し、その体内放射能分布を経時的に評価する。また、放射能の排泄経路、代謝過程も併せて検討し、放射性標識体の基本的な体内動態特性を把握する。 マウスの背部皮下に2%硝酸銀溶液を、Amyloid Enhancing Factor(AEF)を腹腔内にそれぞれ投与し、急性アミロイド惹起モデルを作製する。作製した病態動物モデルに放射性標識体を投与し、その体内分布を経時的に評価することにより分子イメージングプローブとしての可能性を検証する。また集積部位に存在する放射性化合物の分布をex vivo オートラジオグラフィにより評価するとともに、組織切片におけるAAアミロイド線維の組織化学染色を行い、両者の分布と比較検討することにより、作製した放射性標識プローブの詳細な挙動を明らかとする。
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