研究課題/領域番号 |
25670543
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大島 康宏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (00588676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロインジェクション / RI / 細胞内局在制御 |
研究概要 |
申請者はマイクロインジェクションによるRI標識抗体の細胞内注入および細胞内局在制御技術確立のため、平成25年度は蛍光色素を用いた細胞質、核に対する注入方法の検討および蛍光標識抗体による細胞内局在制御に関する検討を実施した。リン酸緩衝液に溶解した蛍光色素fluorescein isothiocyanate (FITC, 10 mg/ml, Mw:389.38) をヒト食道癌細胞株KYSE30の核および細胞質へ注入し5分後に観察した結果、核内注入を行った場合には核における強い蛍光が認められ、細胞質注入を行った場合には細胞全体に広がった蛍光が認められた。これらの結果より、核および細胞質への選択的注入が可能であり、蛍光による確認が可能であることが示された。さらに、注入成功率を算出したところ、核内注入で75.1±7.6% (n=6)、細胞質注入で85.5±6.6% (n=6) であった。抗体による細胞内局在制御に関する検討では、抗アクチン抗体(細胞質局在用)および抗ヒストン抗体(核内局在用)に対して、蛍光色素(Oyster-488, Mw:1050)を標識し、蛍光標識抗体を調製した後、各々(4 mg/ml)を細胞内注入し、細胞内蛍光分布を観察した。注入30 分後に細胞を撮像したところ、抗ヒストン抗体では核内に、抗アクチン抗体では細胞質に蛍光の局在が認められた。一方、FITCを細胞内注入した場合には、注入30 分後では蛍光の細胞内拡散および消失が認められた。抗体の場合には蛍光が拡散することなく、注入部位に局在したことから、抗体を用いることによって抗体標識物の細胞内局在を制御できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の達成度がやや遅れてしまっている理由として、マイクロインジェクションシステムが全自動でないため、蛍光標識抗体の細胞内注入が成功するか否か実験者の手技に依存する部分が多く、実験手技の習得に多くの時間がかかってしてしまったことが原因と考えている。将来的にRIの細胞内局在を制御し、RIの放射線バイスタンダー効果の検討を可能にするために、細胞内注入操作由来の細胞影響ができるだけ少ない安定した注入技術が必要となることを考慮し、実験手技の習得に時間を費やした。これまでの検討で、ある程度安定した細胞内注入を実施できるようになってきていることから、平成25年度実施できなかった検討についても十分に推進できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、平成25年度に実施できなかった項目を検討する。具体的には、蛍光標識抗体の細胞内安定性やRIの細胞内注入量を算出する上で必要なパラメータである1回当たりの細胞内注入量の測定を行う。また、マイクロインジェクションは標的細胞に対し、ガラスキャピラリー穿刺することで物質注入を行うため、直接的な細胞障害を誘導する可能性があるため、細胞侵襲性について検討する。さらに、蛍光標識抗体の標的部位からの漏出率や標的部位における保持率、細胞内分布の変化など、細胞内局在放射能の推定に必要な基礎データの取得を行う。これらの検討が終了した後、平成26年度実施予定としているRI標識抗体を用いた検討を進める。マイクロインジェクションによる細胞内注入では、注入成功率、細胞侵襲性等、実験者技術に依存する点があるため、注入技術の向上にも引き続き取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
応募時の研究費申請額に比べ研究費交付額が減額され、研究の遂行に必要な消耗品への予算配分を考慮した結果、購入予定としていた設備備品(倒立顕微鏡用スタンダード加温チャンバー)を購入することができなくなったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は平成25年度に実施できなかった項目を実施した後、RI標識抗体を用いたマイクロインジェクションを実施し、RI標識抗体の細胞内局在制御が可能であるかについて検討する。そのため、蛍光標識用試薬、抗ヒストン抗体、抗アクチン抗体、131Iを購入する。その他、マイクロインジェクションおよび細胞培養に必要な消耗品の購入に使用する。本研究成果については学会発表および英文誌への投稿を予定しており、その参加費、旅費、雑誌投稿のための英文校閲費、雑誌投稿料に研究費を充当する予定である。
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