研究課題/領域番号 |
25670545
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
藤井 博史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (80218982)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | センチネルリンパ節 / 微小転移 / 免疫応答 / 転移モデル / 胚中心 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、SLN内における癌の予後不良に関連する免疫応答の発見と、その応答もしくはそれに相関する反応を可視化する技術の確立を目的とする。平成27年度は、コントロールと比較して有意な増加が確認され、また、構造的にも構成する細胞集団としても可視化に適した胚中心(GC)に関して解析を進めた。前年度までに、B16悪性黒色腫細胞株-C57BL/6マウスモデル、EMT6乳がん細胞株-BALB/cマウスモデルを樹立しており、両モデルにおいて移植後時間経過に伴い、GC形成および、胚中心B細胞(GL7陽性、PNA陽性)(GCB)の増加が有意に起こることを示した。このGC形成ならびにGCBの増加は対照モデルの完全フロイントアジュバント(CFA)接種皮下炎症誘導モデルと比較しても著しいものであった。従って、移植したがん細胞由来抗原によって誘導されたと考えられたことから、SLNにおけるGCとがん細胞の局在性を免疫組織化学的に解析した。その結果、B16悪性黒色腫細胞株モデルにおいて、GC周囲への黒色腫細胞の局在が確認された。また、蛍光タンパク質(tdTomato)発現EMT6を使用したマウスモデルではGCの皮質側に強い蛍光が確認され、この蛍光の大部分がマクロファージ(CD68陽性もしくはCD169陽性)と共局在しなかったことから、転移によって、効率的に免疫応答が惹起されることが推察された。また、興味深いことに、移植後一週間程度のモデルでは対照群と比較し多数のGC形成が確認されたが、上記蛍光タンパク質由来の蛍光が確認されなかった。従って、このGC形成は現在の術中迅速組織診における遊離腫瘍細胞(ITC)や微小転移など、早初期転移時のサロゲートマーカーになりうることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GC形成と胚中心B細胞(GCB)の有意な増加は悪性黒色腫あるいは乳がん細胞株移植後2-3週程度で両モデルにおいて見られ、細胞株特異的な反応ではないことが示された。また、完全フロイントアジュバント(CFA)接種皮下炎症誘導モデルと比較しGCBの増加が有意であり、がん細胞の転移と相関性が高いことが示された。また、EMT6-tdTomato安定発現株を使用した転移モデルにより、形成されたGCの皮質側に強い蛍光が観測され、その近傍のB細胞では抗体遺伝子改編酵素(AID)の発現が確認された。しかし、当初計画していたin vivoイメージングには至っていない。本年度GCにおいて発現が確認されたAIDや、有意な増加を示したGCBのマーカーであるGL7やPNAをターゲット分子として、イメージング方法を検討中である。その一方、移植後一週間程度のモデルにおいて上記の蛍光が検出されないにもかかわらず、多数のGC形成(対照群比)が確認され、早初期転移時のサロゲートマーカーとして利用できる可能性を見いだすことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
GL7やPNA などのGCBマーカーやAIDをターゲット分子として、GCのin vivoイメージング法の開発を目指す。検討する方法としては抗体工学や、リポソーム等のナノパーティクルを利用し、RIやインドシアニングリーン(ICG)による近赤外光イメージングを考えている。また、GC形成が現在の術中迅速組織診における遊離腫瘍細胞(ITC)や微小転移など、早初期転移時のサロゲートマーカーになりうることが示された。GC形成が免疫応答の活性化であることを鑑みれば、予後との相関に影響している可能性が高い。近年乳がんにおいて、センチネルリンパ節の転移が2 mm以上であっても腋窩リンパ節郭清省略による生存率や再発率が低下しない報告がされているが、省略の可否は他の条件の適・不適をふまえたうえで、担当医との相談によって決められる。従って、上記の相関性を明らかにすることをめざし、相関性が見られれば、省略の可否に対する補足情報として有力なものとなり、QOLの向上に貢献すると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に確認された知見の学会での報告ならびに論文投稿を予定している。 また、H27年度までの研究結果に基づいて、イメージングプローブの作製を計画している。
|
次年度使用額の使用計画 |
H27年度に確認された知見の学会での報告ならびに論文投稿に関わる諸経費 40万円、 イメージングプローブの作製のための抗体や反応試薬、合成オリゴヌクレオチド、動物購入費として65万2千円 以上の項目での支出を予定している。
|