研究実績の概要 |
従来の放射性核種錯体封入リポソームでは放射活性が非特異的に網内系に停留するため、正常組織への被曝が問題となる。本研究では、網内系集積の回避ではなく、捕捉後に迅速にクリアランスさせることを企画し、放射性金属に対する配位子を工夫している。核種として治療用核種Y-90とそれと化学的性質が類似するといわれるIn-111を用いて検討を進めた。 初年度にY-90とキレート剤ECの錯体の不安定さが示唆されたことから、本年度はECに変わりうる新規Y-90配位子としてL,L-Propylenedicysteine(以下PCと略)並びにethoxybenzyl diethylene triamine pentaacetic acid (DTPA-EOB)を設計,合成し、検討に供した。111In-PC-封入リポソーム並びに111In DTPA-EOB-封入リポソームの調製を実施した結果,目的物を得ることができた.それぞれのリポソームを正常マウスに静脈内投与し、体内分布を検討した。その結果,111In-PC-封入リポソームでは、肝臓・脾臓からのクリアランスおよび尿中への排泄は、In-111-EC封入リポソームとほぼ同等であった。一方、In-111-DTPA-EOB-封入リポソームでは、ECやPCを用いたときよりも肝臓・脾臓からのクリアランスと尿中への排泄は遅くなった. In-111-PC-封入リポソームの内容物を分析した結果,In-111-PC錯体が確認された。ただし、In-111-PC錯体は不安定であるか、酸化されやすいことが示唆された。Y-90とPCとの錯体形成およびリポソーム封入は今後の検討となるが、安定な錯体を形成できれば、優れた網内系クリアランスが得られると期待される。
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