研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、キメラ抗原受容体(CAR) の特性を生かして CD4T 細胞と CD8T 細胞の両者の相乗的抗腫瘍効果の機構を解明し、その応用 による新規性が高くまたより効率的な T 細胞輸注療法の開発を目指す。本年度は、in vitroにおける癌胎児性抗原(CEA)特異的CAR導入CD4T細胞とCD8T細胞の機能比較と、CEAを自己抗原としてヒトと同様の発現様式を示すCEAトランスジェニックマウスを用いてCEA特異的CAR導入全T細胞(CD4とCD8T細胞)のin vivoにおける有効性と安全性の評価を行い、以下の結果を得た。①CAR導入CD4とCD8T細胞は、それぞれ同程度のCD107a、TNFaとIL-2を産生した。一方、IFNgはCAR導入CD8T細胞のみに発現が認められた。両細胞の細胞障害性活性を測定した結果、予想通りCAR導入CD8T細胞は、標的抗原特異的に細胞障害活性を発揮したが、CAR導入CD4T細胞は、細胞障害性活性を発揮しなかった。これらの結果から、CAR導入CD4T細胞は、通常の培養条件下(IL-2のみを添加)では、直接的な腫瘍殺傷能力をもたないこと、それ故、直接的な腫瘍障害性とCD8T細胞の腫瘍障害性を高めるヘルパー機能を誘導する培養条件を検討する必要があることが示唆された。②CEA特異的CAR導入T細胞はCEA-Tgマウスに担癌させたCEA陽性腫瘍の増殖を抑制した。その際、副作用は認められなかった。ヒトにおけるT細胞輸注療法プロトコールに含まれるリンパ球減少性の前処置を施した場合、腫瘍縮小効果が強まったが、放射線照射を含む前処置群においては、肺や腸に炎症が認められるようになった。この結果から、T細胞輸注療法におけるCEA特異的CAR導入T細胞の有効性が期待できるが、その有効性を高めるための前処置プロトコールの検討を十分に行う必要があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
応募内容に基づいた平成25年度研究計画はほぼ完遂している。
①CAR 導入 CD4T 細胞調整法の最適化定法にしたがって、CAR 導入 CD4T 細胞調製を Th1 もしくは Th17 分化誘導条件下に行う。得られた CAR 導入 CD4T 細胞が Th1 もしくは Th17 サイトカイン産生パターンを示すこと、さらに細胞障害性活性を検討する。また、これらのCAR導入Th1/Th17とCAR 導入CD8T 細胞との併用輸注療法の有効性を移植腫瘍系で解析する。同時に、CEA-Tgマウスを用いてリンパ球減少性の前処置プロトコールを最適化する。②発がん系を用いた CAR 導入 CD4T 細胞と CD8T 細胞の混合移入による抗腫瘍効果増強作用の検討上記の実験で得られた結果を基に、最適化した調製法にてCAR導入CD4T細胞を調整し、CAR導入CD8T細胞との併用輸注による抗腫瘍効果を、大腸癌を誘発したCEA-Tg マウスを用いた発がん系で検討する。
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