研究課題
本研究では、キメラ抗原受容体(CAR)の特性を生かしてCD4T細胞とCD8T細胞の両者の相乗的抗腫瘍効果の機構を解明し、その応用による新規性が高く、またより効率的なT細胞輸注療法の開発を目指す。昨年度は、マウス脾臓より、CD4とCD8T細胞を精製し、癌胎児性抗原(CEA)特異的CARをレトロウイルスベクターを用いてそれぞれのT細胞分画に導入した。拡大培養後、導入CEA特異的CARのT細胞上での発現と抗原特異的活性化機能をサイトカインと細胞障害性の面から確認した。その結果、CD4とCD8T細胞上に同程度のCARを発現が認められ抗原特異的にサイトカイン産生を誘導できるが、細胞障害活性はCD8T細胞分画にのみ認められた。本年度は、CD4T細胞のCD8T細胞に対するヘルパー機能を期待できることから、CEA陽性腫瘍(MC32a)を担癌させたマウスにCEA特異的CAR導入CD4、CD8、CD4+CD8T細胞をそれぞれ輸注し、腫瘍縮小効果を検討した。in vitroの細胞障害性実験の結果から予想される通り、CD4T細胞単独輸注群では非輸注群と比較しても全く抗腫瘍効果を発揮しなかった。一方、CD8T細胞単独輸注群では強い抗腫瘍効果を発揮したが、CD4+CD8T細胞輸注群ではCD4T細胞によるヘルパー機能を介した抗腫瘍効果の増強は認められなかった。CEAは正常大腸の管腔側等に発現が認められる正常自己抗原であることから、自己免疫病発症のリスク評価を含めて安全性は十分に確保されなければならない。そこで、CEAを自己抗原としてヒトと同様の発現様式を示すCEAトランスジェニック(Tg)マウスを用いて、CEA特異的CAR輸注療法の安全性を評価した。その結果、CEA特異的CAR導入T細胞輸注は、担癌CEA-TgマウスのCEA陽性腫瘍の増殖を著明に抑制するものの、血中IL-6濃度の上昇に伴って体重減少が認められた。このサイトカイン遊離症候群に起因すると考えられる副作用の制御を目的として、抗IL-6R抗体投与の有効性を検討するための準備を進めている。
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