研究課題/領域番号 |
25670554
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝移植 / 異種移植 / 骨髄細胞 / Kupffer細胞 |
研究実績の概要 |
昨年度は異種間の移植に先立って、ラットを用いた同種間強拒絶肝移植モデルを用いて研究を行った。その結果、肝移植術前のドナーに対する骨髄細胞移植によって肝グラフト内のKupffer細胞が置換され肝移植術後の拒絶反応が軽減することが判明した。今年度、追加の実験を行い研究結果についてさらに詳細な評価を行った。Kupffer細胞により特異性の高いマーカーを用いて移植肝グラフトの免疫染色を行い、肝グラフト内の移植した骨髄細胞がKupffer細胞に分化していることの確証が得られた。また、肝組織中のサイトカインの発現をPCRで評価したが、炎症性サイトカインの上昇が抑えられていることが確認された。Kupffer細胞の置換によって拒絶反応が軽減するメカニズムについて考察するためにin vitroでの実験系を用いて評価を計画したが、肝臓からの肝構成細胞分離の過程での問題や、評価のための実験系が複雑となる事などのために今年度中には実験系の確立が得られなかった。 肝グラフト内の内皮細胞の置換を得るための方法として、①放射線照射による内皮細胞の障害が不十分であった可能性を考えて、放射線照射線量の増加や、別の内皮細胞障害の方法としてモノクロタリンの使用する、あるいは②肝グラフト内での肝再生を促すために、骨髄細胞移植後に肝切除を追加する。といった実験を行った。しかし、いずれの方法も免疫染色で同定できるだけの内皮細胞の置換を得るに至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異種モデルの検討に先立って、同種強拒絶モデルを用い、移植した骨髄細胞の肝グラフト内での生着・分化についてさらに詳細な検討を行った。やはり移植した骨髄細胞は肝移植の拒絶反応における主たる標的となると考えられる内皮細胞には分化していなかった。実験の条件を変更することで内皮細胞の置換が得られないかを検討したが、今年度は期待した結果が得られなかった。 異種モデルでの検討のための準備については並行して進めているが、マウスに対する骨髄細胞移植の手技の獲得に難渋し時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
ラット同種間強拒絶肝移植モデルにおける実験の結果を論文として報告した(K Endo, et al. J Gastroenterol Hepatol 2014)。マウス-ラットの異種移植モデルにおいても同種間モデルでの結果と同様に、骨髄細胞移植によってKupffer細胞の置換が得られるのかについて実験を進める。 また、今年度に引き続いて内皮細胞の置換を得るために、条件を変えて実験を行う予定である。
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