研究実績の概要 |
昨年度までは、肝グラフト内の移植した骨髄細胞がKupffer細胞に分化していること、肝組織中の炎症性サイトカインが抑制されていることが確認された(Endo K, Uemoto S, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2015;30:944-51.)。今年度は、引き続き、Kupffer細胞の置換によって拒絶反応が軽減するメカニズムについての検討を行ってきた。 また、今年度は、さらに、本来の目的である異種動物を使用してのin vivoでの実験を行った。まず初めに、ラットの部分肝をマウスへ同所性に移植する実験を行ったが、動物サイズミスマッチの要素が強く、ブタ/ヒトの臨床応用を考えると、改善の余地があると考えられた。そこで、引き続き、サイズミスマッチの要素が少ない、ハムスター/ラット間での移植を行った。当初は、ハムスターの部分肝グラフトをラットへ同所性に肝移植していたが、その後、より安定性を担保するために、異所性に肝移植する方針とした。この手技の習得に時間を要したが、タクロリムスの投与を行うことで、1週間の生存を得られるようになった。現状では、移植後のグラフトには強い拒絶反応が起こっており、今後は、グラフトへの骨髄移植を行うことにより、拒絶反応を抑制できるかどうかを検証していく予定である。 同種間モデルの結果からは、ハムスター/ラットの異種移植モデルにおいても同様に骨髄細胞移植によってKupffer細胞への置換が得られることが予想される。今後は、こうしたメカニズムにより拒絶が抑制されるかどうかについて実験を進める。また、内皮細胞への置換を得るためにも、さらに条件を変えて実験を行っていく予定である。
|