研究実績の概要 |
H25年度)①雄性Wistarラットを用い、食餌性に脂肪肝モデルを作成した.正常肝と比較し,肝腫大,肝重量/体重比の増大(5.5±0.3 vs. 4.0±0.2%, p<0.0001),組織中Triglycerideの増加(0.157±0.006 vs. 0.042±0.001g/g-protein,p<0.0001),組織学的な50%程度の大滴性脂肪肝が確認された. ②脂肪肝グラフトの対する室温(20-25℃)灌流保存の効果を確認した.4℃浸水冷却保存を対照群とし,保存後に体外再灌流系で評価した.灌流保存群で有意な逸脱酵素の低下(ALT:p<0.001,AST:p<0.001)、胆汁産生増加(p<0.001)が認められた.冷却保存群では組織学的に肝細胞空胞化が目立ったが,灌流保存群では抑制された. H26年度)③(②に引き続き)灌流保存群では有意に良好なATP保持(p=0.001),酸化ストレスマーカーの低下,ミトコンドリア逸脱酵素GLDHの低下(p<0.001)が認められた.電子顕微鏡レベルにおいて,ミトコンドリア腫大の抑制,類洞構造の保護効果が確認された. ④室温灌流保存液中に脱脂肪化促進因子としてカルニチン,ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト,AMPキナーゼ活性化剤を投与し,6時間の脂肪肝灌流を行ったが,明らかな肝組織中triglycerideの低下は認められなかった. H27年度)⑤脱脂肪化促進のため,灌流温度の上昇(室温22-25℃→常温35-37℃)を試みた.酸素運搬体を含有しない無細胞灌流液では灌流中の乳酸の段階的上昇,すなわち酸素供給不足が認められたため,酸素運搬体としてラット赤血球を用いた灌流保存を開始した.但し,灌流ポンプによる溶血の問題,豊富なドナーラットを要するなどの問題に直面している.
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