研究課題/領域番号 |
25670567
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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研究分担者 |
木田 泰之 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 研究チーム長 (20396526)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌線維芽細胞(CAF) / 間葉系幹細胞(MSC) / 癌-;間質のクロストーク / 膵癌 |
研究概要 |
膵癌が間質細胞を誘導し、間質に依存する性質を逆手にとり、“デコイMSC”を外来性に投与し、膵癌細胞周囲に増殖させる。その後、一気に間質を消去し間接的に癌細胞を死滅させる新規癌間質治療を本研究は目指している。 がん間質細胞の元となる間葉系幹細胞(MSC)は一般に骨髄由来(BM-MSC)と考えられ広く研究が進められて来たが、増殖速度が遅くかつ遺伝子導入効率が非常に悪い為engineered-MSC のソースとしては利用しにくかった。そこで、利便性に勝る脂肪細胞由来MCS (Ad-MSC)を利用する事を計画し、初年度はAd-MSCがBM-MSCと同様に癌の間質形成に寄与するか否かの検証を行った。 癌細胞と成熟した癌線維芽細胞(CAF)をマウスに混合して移植すると、癌細胞とCAFは互いに関連が無いようにばらばらに増殖してしまう。一方、pilot studyでCAFになる前の未熟なMSCと混合移植すると、癌細胞腺管の周囲を線維芽細胞が取り囲む、あたかも臨床癌の形態を模倣する様な像が確認出来、癌-間質のクロストークの再現が見られた。この“臨床癌の形態模倣”を評価項目として、複数のヒト由来BM-MSCとAD-MSCを癌細胞と混合培養した。2種類のBM-MSCが5点の形態模倣をしたのに対し、5種類のAD-MSCは1種類が5点、2種類が4点、2種類が3点であった。またこの評価系はマウスを使ったin vivoではなく、シャーレ上でのin vitro アッセイ系で評価できる事も発見した。 多くの癌間質研究者がCAFを使って研究を推進してきたが、MSCの方が“臨床癌の形態模倣”という点で圧倒的に意義深い材料であるという現象を確認した。さらに、BM-MSCではなくAD-MSCでも十分癌細胞とcross talk出するという事は今後の癌研究発展に寄与する情報として発信でき、実際、2014年4月 米国癌学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
engineered-MSC のソースとして扱いにくいBM-MSCを無理に使わなくてもAD-MSCで十分目的が達成出来そうだという傍証が得られた事は大きな進捗である。単なる癌細胞への増殖促進効果という点だけでなく、“臨床癌の形態模倣”という点からもAD-MSCが価値のある材料である事を、初年度で確認出来た事は(2)おおむね順調に進展している。と自己評価する。 計画ではマウスのBM-MSCとAD-MSCをそれぞれ単離して研究を進展させる予定であったが、ヒト由来の癌細胞を主に研究材料としている事から、MSCもヒト由来のものに計画を変更して研究を遂行し、予定通りの現象を確認する事が出来た。 一方、血液中に注入したAD-MSCが腫瘍に集まるか(=Forming)という現象については、今の所再現性のある結果にたどり着けていない為、この点は(3)やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる本年は、まず“臨床癌の形態模倣”という点から癌細胞+AD-MSCのモデルが価値のある材料である事を AD-MSCを薬剤キャリアーとすべく、レンチウイルスベクターを使ってHSV-TK をAd-MSC に導入する。シャーレ上で癌細胞とAd-MSC(HSV-TK+)を混合培養し、ガンシクロビル投与による間質の消失、及び、癌細胞の増殖抑制効果を確認する。 また、AD-MSCの癌へのFormingについては、血管内投与ではなく、腹膜播種モデルに対する腹腔内投与にモデルを変更して推進している予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画ではマウスのBM-MSCとAD-MSCをそれぞれ単離して研究を進展させる予定であったが、ヒト由来の癌細胞を主に研究材料としている事から、MSCもヒト由来のものに計画を変更して研究を遂行した。共同研究者が所有していた細胞を有効に利用する事で初年度の経費が削減でき、繰り越しの申請を行った。 本年度、すなわち2年目以降の遺伝子導入研究に予想以上の研究費が必要である事は当初より予想されており、細胞への遺伝子導入、導入細胞のセレクションなどの費用に充当する右予定である。
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