現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの到達点を記す。1.有茎腸管グラフトにミンチした肝組織を充填すると充填肝組織は再癒合し急速に増殖増大する。この腸管グラフトの壁面に数個の小孔を開け、その部分を部分肝切除した離断面に逢着したところ充填肝組織が小孔を通して母体側の肝離断面に進入し母体肝と直接、接触していることが確認された。このことはグラフト内に充填した肝組織に母体側の門脈血流が入り込めることを意味する。これにより、グラフト内に充填した肝組織は本来の肝の血流システムにより近づくことが出来る。2.我々はこれまでに、独自に、肝の幹様細胞を単離しクローン化してきている。この幹様細胞に対して幹細胞に特異的なマーカーといわれている(C-Met, c-Kit, CS45R, CD34, Thy1)に関して免疫組織学的に検討した。その結果はC-Met+, c-Kit-, CD45R+, CD34-, Thy1+であった。なかでも幹細胞に特異的と言われるC-Met+, c-Kit-の組み合わせが認められたことは、我々が単離したこの細胞が幹細胞の性格を有していることを意味する。3.この腸管グラフトにミンチした肝組織とともに肝の幹様細胞を共充填することは肝幹様細胞が、肝組織が再癒合し急速に増殖増大する環境下に門脈血の影響を受けながら置かれることを意味する。このような環境下では肝の幹様細胞が機能肝細胞に分化誘導してゆくことが期待される。4.また、この幹様細胞がグラフト内から母体側の肝臓に遊走してゆき母体の肝内でも分化増殖する可能性も期待できる。5.しかし、昨年から本学の動物実験施設が改修工事に入ってしまい腸管グラフト内にミンチした肝組織と肝幹様細胞を共充填する実験を行うことができないでいる。これが、「進行がやや遅れている」理由である。
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