研究課題/領域番号 |
25670569
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
瀬戸 泰之 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00260498)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | p53 / 蛋白質 / 変異 / 高次構造 / 顕微レーザーラマン分光 / 分子動力学シミュレーション |
研究概要 |
p53野生型蛋白質が活性を持つ上で中心的役割を担っているセントラルDNA結合コアドメインは、亜鉛イオン一個に配位結合し、βシートリッチな二次構造を有しているが、亜鉛欠乏下で合成したGST融合p53野生型蛋白質では、ラマンスペクトル中でZnイオンとの配位結合に由来するZn-S結合のピークが消失し、βシート由来のピークが大幅に減弱し、代わりにαヘリックス由来のピークが増大した。配位結合近傍の変異であるR175H変異蛋白質については、GST融合蛋白質の合成温度(14℃)では、Zn-S結合ピークを認めたが、生体温度(37℃)では、Zn-S結合ピークが消失し、αヘリックスリッチな二次構造への変化を示唆するラマン解析結果であった。円二色性スペクトル解析も行いラマン解析と同等の結果を得た。 p53野生型遺伝子をもつ細胞株HCT116やp53R175H変異遺伝子をもつ細胞株SKBR-3についてエタノール固定後、コンフォメーション特異的モノクローナル抗p53抗体を用い免疫染色を行い、それぞれの高次構造が維持されていることを確認した上で、in situラマン解析を行った。GST融合蛋白質の結果と同様に、HCT116ではβシートリッチ、SKBR-3ではαヘリックスリッチな二次構造を有しているとの解析結果であった。さらにp53欠損細胞株であるH1299にp53野生型またはR175H変異遺伝子を一過性導入し、in situラマン解析を行い、同様な結果を得た。現在、SKBR-3を用い、生きた状態でのin situラマン解析の最適化検討を行うと共に、p53活性回復効果があるPRIMA1をSKBR-3の培養液に添加することでの構造変化の解析も試みている。 分子動力学シミュレーションも開始した。野生型蛋白質からZnイオンを除去すると亜鉛近傍の構造が大幅に変化する結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顕微レーザーラマン分光による培養細胞中のin situ p53構造解析を行い、GST融合蛋白質を用いた結果と同様にp53野生型蛋白質とR175H変異蛋白質との間に明確な高次構造の違いを認めた。すでに、p53活性回復効果があるPRIMA1やシスプラチンなどの抗がん剤を培養液中に添加し、細胞中の経時変化を追跡できるようさらなる測定の最適化検討を行っている。細胞が生きたままでのin situ ラマン解析について検討を加えなければならない点がいくつかあるが、平成26年度に計画している項目にも踏み込んだ検討ができている。 平成26年度に予定している分子動力学シミュレーションについても平成25年度中に着手している。I-TASSER Server(http://zhanglab.ccmb.med.umich.edu/I-TASSER/)を用い、p53野生型蛋白質でProtein Data Bankに登録がないドメインの高次構造を予測し、p53野生型蛋白質全長の三次元構造を構築し、これを元に、Amber12による分子動力学シミューションを実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、生きたままの状態での細胞中のin situラマン解析を行い、p53活性回復効果があるPRIMA1、マレイミド類似化合物やシスプラチンなどの抗がん剤の作用の経時的変化を十分解析できるよう最適化する。 p53変異蛋白質の構造変化を分子動力学シミュレーションし、p53活性回復効果がある化合物との作用部位を明らかにすることで、活性回復のメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションソフト補強やラマン装置メンテナンスを平成26年度に行うこととしたためであり、実験は順調で、物品を予定通り購入している。 シミュレーションソフト補強やラマン装置メンテナンスを平成26年度に行う以外は、計画通りに使用する。
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