研究課題
本研究は、膵線維化の進展においてどの細胞が線維(主にコラーゲン)を産生するかを探求することを目的とし、そのためコラーゲンα1タイプ1プロモータ下にGFPを発現するトランスジェニックマウス(Coll GFPマウス)を用いた。Coll GFPマウスに膵線維化を誘導すると、線維隔壁に沿い多数のGFP陽性細胞が観察された。このGFP陽性領域は、活性化膵星細胞のマーカーであるαSMA陽性であった。膵星細胞のマーカーであるGFAPの免疫染色を行うと、線維化膵でGFAP陽性細胞は著明に増加するが、GFP、GFAP共に陽性の細胞は一部であった。濃度勾配遠心による膵非実質細胞分離にて、細胞質内にOil Red陽性の脂肪滴を持つ細胞を得た。これらは数日間の培養で脂肪滴を失い筋線維芽細胞様に形態を変え、GFP陽性となり、更にαSMA、一部はGFAPにも陽性となり活性化膵星細胞であると考えられた。小型で球形のGFP陽性細胞も認められたが、タイムラプスでは、これらの細胞に互換性はなかった。初代培養膵星細胞では、蛍光顕微鏡でビタミンAの自家蛍光を観察できなかった。UVを用いたFACSでも自家蛍光陽性の細胞はsortされなかった。ビタミンAの細胞内貯蔵の主な形態であるレチノイン酸パルミテートの含有量を質量分析にて定量したところ、膵星細胞では肝星細胞に比べその量は極めて微量であった。膵星細胞において、レチノールのエステル化に必須の酵素LratのmRNA発現は非常に低かった。免疫電子顕微鏡による観察では、膵組織中のGFP陽性で脂肪滴を含有する細胞を同定し得たが、これらは同様に観察した肝星細胞に比し、脂肪滴は非常に小さく少ないものであった。ここまでの研究から、肝星細胞の膵カウンターパートとされる膵星細胞の、肝星細胞とは大きく異る特徴が明らかとなり、また膵星細胞以外にも線維を産生する細胞の存在が示唆された。
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