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2013 年度 実施状況報告書

治療抵抗性癌幹細胞の酸化ストレス応答を担うNrf2機能の解明と創薬シーズの開発

研究課題

研究課題/領域番号 25670576
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関大阪大学

研究代表者

工藤 敏啓  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20593859)

研究分担者 石井 秀始  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10280736)
今野 雅允  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80618207)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード癌 / 発現制御 / 薬学
研究概要

近年肺がんなどの固形癌においてNrf2の機能亢進が報告されており、癌の悪性化に貢献していることが知られている。また、癌細胞において特異的にNrf2の機能を阻害することはがんの治療にきわめて有効であると期待されているが、Nrf2が核局在タンパク質であることから創薬の標的として難易度が高いと考えられ、その阻害剤の開発は全く進んでいない。Nrf2はペントースリン酸経路の酵素遺伝子や、NADPH産生に関与する酵素の遺伝子を直接的に活性化することが知られており、癌の悪性度に関わる因子として注目されている。しかし、Nrf2が活性化することで、様々な代謝経路のどこが癌の悪質形質に関与するのかは未知であった。そこで本研究では、Nrf2を過剰発現又はノックダウンした大腸がん細胞株を用いてメタボローム解析を行いNrf2活性化時に活発に動く代謝経路の同定を行った。結果Nrf2を過剰発現した細胞に比べてNrf2ノックダウン細胞ではグルタミン代謝系、TCAサイクル、ペントースリン酸経路などの代謝経路へ大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、Nrf2をノックダウンした大腸がん細胞株では増殖能の低下、浸潤能の低下、薬剤への感受性の増加、アポトーシス細胞の増加が認められ、癌の悪性形質の減弱につながることが明らかとなった。次にsiRNAを用いて本研究により明らかとなったグルタミン代謝系、TCAサイクル、ペントースリン酸経路を担う各種代謝酵素のノックダウン実験を行った。それぞれの代謝酵素をノックダウンした細胞を用いて細胞増職能、浸潤能、抗癌剤感受性などへの影響を確認した。その結果グルタミン代謝系酵素をノックダウンした細胞で顕著に増殖能の低下、浸潤能の低下、薬剤への感受性の増加が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

癌の根絶に向けた代謝酵素の効果的阻害部位の検討は順調に進んでいる。大腸がん細胞の根絶に向けメタボローム解析を行った結果TCAサイクル、ペントースリン酸経路を担う各種代謝酵素に比べてグルタミン代謝系の酵素を阻害することが重要であることを突き止めた。グルタミン代謝系の酵素を阻害することにより大腸がん細胞の増殖能の低下、浸潤能の低下、薬剤への感受性の増加が認められた。次年度に計画しているNrf2のシグナルを阻害する阻害剤のスクリーニング、同定した新規阻害剤の効果確認(in vitro) 、阻害剤の効果確認(in vivo)は今年度の研究成果を受け計画通り実施可能な状況となっている。

今後の研究の推進方策

【阻害剤のハイスループットスクリーニング】低分子化合物ライブラリー(約6万種)を用いてTmシフトアッセイ(Differential Scanning Fluorimeter)を行う。しかし、Tmシフトアッセイのみでは目的以外の化合物がヒットしてくる可能性があるため、2ndスクリーニングとして蛍光法(FEBS Journal 2012)また、APADH定量法を用いてIC50が一桁μMオーダーになる化合物のスクリーニングを行う。
【同定した新規阻害剤の効果確認(in vitro)】ハイスループットスクリーニングにより同定した阻害剤を大腸癌細胞株培養培地へ添加し、Proliferationアッセイ、MTTアッセイ、Invasionアッセイを行い、阻害剤の癌細胞への効果を確認する。また、メタボローム解析を行うことで同定した阻害剤の代謝への影響を確認する。
【阻害剤の効果確認(in vivo)】患者由来転移性大腸癌細胞をマウス生体内へ移植し、その後阻害剤をマウスへ投与することで、腫瘍への影響をみる(造腫瘍能の確認)。副作用の確認として、各種マウス正常組織を組織切片、メタボローム解析等で確認する。
スクリーニングがうまくいかない場合の対応として「理研社会知創世事業創薬医療技術基盤プログラム、」医療技術基盤プログラムおよび文科省「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」化学療法基盤支援活動班の「標準阻害キット」「寄託化合物ライブラリー」「化学療法パイロットライブラリー」等の化合物ライブラリーも用いてスクリーニングする化合物の種類を増やす。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Depletion of Jarid1b induces cellular senescence in human colorectal cancer.2013

    • 著者名/発表者名
      Ohta, K., Haraguchi, N., Kano, Y., Kagawa, Y., Konno, M., Nishikawa, S., Hamabe, A., Hasegawa, S., Ogawa, H., Fukusumi, T., Uemura, M., Nishimura, J., Hata, T., Takemasa, I., Nishimura, T., Noguchi, Y., Ozaki, M., Kudo, T., Sakai, D., Satoh, T., Fukami, M., Ishii, M., Yamamoto, H., Doki, Y., Mori, M., Ishii, H.
    • 雑誌名

      Int. J. Oncol.

      巻: 42 ページ: 1212-1218

    • DOI

      10.3892/ijo.2013.1799

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Jumonji/Arid1b (Jarid1b) protein modulates human esophageal cancer cell growth.2013

    • 著者名/発表者名
      Kano, Y., Konno, M., Ohta, K., Haraguchi, N., Nishikawa, S., Kagawa, Y., Hamabe, A., Hasegawa, S., Ogawa, H., Fukusumi, T., Noguchi, Y., Ozaki, M., Kudo, T., Sakai, D., Satoh, T., Ishii, M., Mizohata, E., Inoue, T., Mori, M., Doki, Y., Ishii, H.
    • 雑誌名

      Mol. Clin. Oncol.

      巻: 1 ページ: 753-757

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aldehyde dehydrogenase high gastric cancer stem cells are resistant to chemotherapy.2013

    • 著者名/発表者名
      Nishikawa, S., Konno, M., Hamabe, A., Hasegawa, S., Kano, Y., Ohta, K., Fukusumi, T., Sakai, D., Kudo, T., Haraguchi, N., Satoh, T., Takiguchi, S., Mori, M., Doki,Y., Ishii, H.
    • 雑誌名

      Int. J. Oncol.

      巻: 42 ページ: 1437-1442

    • DOI

      10.3892/ijo.2013.1837

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Adipose-derived mesenchymal stem cells and regenerative medicine.2013

    • 著者名/発表者名
      Konno, M., Hamabe, A., Hasegawa, S., Ogawa, H., Fukusumi, T., Nishikawa, S., Ohta, K., Kano, Y., Ozaki, M., Noguchi, Y., Sakai, D., Kudoh, T., Kawamoto, K., Eguchi, H., Satoh, T., Tanemura, M., Nagano, H., Doki, Y., Mori, M., Ishii, H.
    • 雑誌名

      Dev. Growth Differ.

      巻: 55 ページ: 309-318

    • DOI

      10.1111/dgd.12049

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Eradication of therapy-resistant cancer cells in gastrointestinal organs.2013

    • 著者名/発表者名
      Nishikawa, S., Konno, M., Hamabe, A., Hasegawa, S., Ogawa, H., Kano, Y., Fukusumi, T., Ohta, K., Noguchi, Y., Ozaki, M., Kudo, T., Sakai, D., Haraguchi, N., Satoh, T., Doki, Y., Mori, M., Ishii, H.
    • 雑誌名

      Mol. Clin. Oncol.

      巻: 1 ページ: 15-17

    • 査読あり
  • [学会発表] mFOLFOX6 + ベバシズマブ療法により高アンモニア血症を来すも分岐鎖アミノ酸製剤により継続可能となった進行結腸がんの一例2013

    • 著者名/発表者名
      工藤敏啓、佐藤 太郎、坂井 大介、杉浦 孝司、竹政 伊知朗、山本 浩文、石井 秀始、森 正樹
    • 学会等名
      第11回日本臨床腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県)
    • 年月日
      20130829-20130831

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公開日: 2015-05-28  

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