研究課題/領域番号 |
25670581
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大段 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (10363061)
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研究分担者 |
田中 友加 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (90432666)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NK細胞 / 分子標的薬 |
研究概要 |
我々は、ヒトCD34+細胞造血幹細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)からkiller cell immunoglobulin-like receptor(KIR)を欠くunlicensed natural killer(NK)細胞や未成熟NK細胞を誘導することに成功した。本研究では、これらのinduced NK細胞(iNK細胞)の抗腫瘍機構の解明と分子標的薬による肝細胞癌に対する制癌相乗効果の可能性について解明することを目的とする。今年度は、In vitro実験で報告されているLicensed NK細胞の抗腫瘍活性が、生体内で固形がんの長期成績に与える影響について、遺伝子解析により個人の潜在的license経路の判定と肝細胞癌(HCC)の術後再発予後に影響を及ぼすかを、1997年~2010年に施行したHCCに対する初回肝切除症例170例を対象として解析した。患者血球より精製したDNAをrSSO-PCR法を用いてKIR, HLA 遺伝子タイピングを行い、Propensity score matching法による調整後、再発予後解析を行った。その結果、遺伝レベルのKIR-HLAペアの累積により、HCC術後再発予後が良好な患者群が存在し、NK細胞のLicense効果がHCC術後予後に強く関わることをつきとめた(論文投稿中)。今後、KIR-HLAによってもたらされるlicense効果を意図的に操作することができれば、HCCに対するNK細胞を用いた養子免疫療法を行う上で非常に強力なツールとなると考えられた。 また、NK細胞は分子標的薬(Sorafenib)によってアポトーシス誘導抗腫瘍因子であるTRAIL発現を増強することを突き止めた。今後は、分子標的薬とlicense化したiNK細胞およびunlicensed NK細胞との抗腫瘍相乗効果について解析をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KIR-HLA相互作用によるNK細胞のlicenseの蓄積が、肝細胞癌の予後に関与する因子であることを確認した。今後は、unlicensed typeが主体であるinduced NK細胞(iNK細胞)に対し、HLA class I発現の内皮系細胞、上皮系細胞を用いたlicense化の誘導実験を行う。また、分子標的薬による癌細胞のNK細胞に対するligand発現増強やNK細胞の抗腫瘍分子の増強は確認したため、今後は相乗効果の検討を行う。 研究はほぼ順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は、計画通りに進行中である。今後、unlicensed typeが主体であるinduced NK細胞(iNK細胞)に対し、HLA class I発現の内皮系細胞、上皮系細胞を用いたlicense化の誘導実験について細胞腫の選択、あるいは、培養条件の検討を要する。また、肝臓内に存在する活性化NK細胞は、非常に高い抗腫瘍活性を有することをこれまでに確認している。そこで、CD34+細胞について解剖学的採取部位(末梢血、肝臓、骨髄)による誘導効率の違いについて検討する。分子標的薬とiNK細胞の抗腫瘍活性の相乗効果については、Humanized マウスを用いた担癌モデルで評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額において異なった結果となったが、研究計画に変更はなく予定通りの研究を進めていく。 研究計画において大きな変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。使用内訳は、細胞誘導実験に必要な培養液および細胞株さらにマウスモデルを用いたin vivo実験に必要なマウス購入・飼育費が主体である。
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