研究課題/領域番号 |
25670585
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究分担者 |
嶋本 正弥 九州大学, 大学病院, 助教 (00457433)
清水 祐紀子 九州大学, 大学病院, 助教 (10404021)
坂井 寛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80611665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / TGFβ / 癌間質相互作用 |
研究概要 |
膵癌におけるその発癌原因遺伝子としてこれまでの報告から、Kras・p53・Smad・TGFβなどが挙げられている。さらに、膵癌細胞は自身のみでなく周囲の膵癌間質細胞特に膵星細胞に影響を受ける癌間質相互作用によってその悪性度が増すことも報告されている。そこで、TGFβに着目しin vitroの実験で膵癌細胞並びに膵星細胞において解析を行ったところmRNA並びに蛋白質レベルでの発現が認められ、さらに互いの上清を用いて培養を行った後ではTGFβの発現が増強することが確認できた。さらに、前述同様に膵癌細胞と膵星細胞は共に単独培養よりも互いの上清を用いて培養を行った方が増殖能・遊走能・浸潤能において悪性度が増すことが確認できた。そこで、TGFβの阻害剤として考えられているtranilastを用いると、単独培養では強い抑制効果は認められなかったものの互いの上清を用いた場合では、増殖能・遊走能・浸潤能すべてにおいて抑制効果が認められた。その証拠として浸潤能に関するMMP9の発現がtranilastの投与で低下することが認められた。さらに、in vivoの実験においてもtranilast投与群において膵癌細胞と膵星細胞の同所異種移植モデルでの腫瘍形成の低下を確認できた。これは、TGFβが癌間質相互作用において非常に重要な役割を担っており、発癌に関しても同様にTGFβを抑制することでその制御につながる可能性があることを示唆するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、膵癌のおける発癌原因遺伝子としてのTGFβについて膵癌細胞並びに膵癌間質の代表とされる膵星細胞におけるTGFβの役割について研究を進めた。膵癌細胞並びに膵星細胞でTGFβの発現が確認されさらに、その相互作用において増殖能・遊走能・浸潤能が増すことが確認できた。TGFβ阻害剤を用いることでその癌間質相互作用を抑制し、悪性度を減弱させることを確認できた。 しかし、これまでの研究は発癌後の状態を確認しているものであり発癌以前の状態では確認されていないため研究の進捗はやや遅れているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当研究室で導入を行っている膵癌自然発生マウスを用いて研究を検討する。膵癌自然発生マウスはその発生過程でPanIN病変を認めるため、cDNA array、miRNA profiling、プロテオーム解析やmetabolic profilingなどの網羅的な解析はもちろんのこと本年度で得られた研究成果をもとに阻害剤などを用いて膵癌carcinogenesisにおける間質ニッチの制御に関する評価を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗がやや遅れているため。 蛋白精製キット、qRT-PCR試薬(担当者3名×20万/1-2年目計100万)、ソート用抗体(5万×10本/1-2年目;計100万), siRNA(5-7万×5本/名×5名/1年目30万)、shRNA/レトロウイルス作成キット(10万×1箱/名×5名)、マウス等 (5,000×20匹×3グループ×2セット/2年目90万)などの消耗品を経費として予定している。
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