研究課題/領域番号 |
25670586
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
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研究分担者 |
高畑 俊一 九州大学, 大学病院, 講師 (50437779)
上田 純二 九州大学, 大学病院, 助教 (90529801)
真鍋 達也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60546464)
白羽根 健吾 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10529803)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 / 癌微小環境 / 治療抵抗性 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
膵癌は、他の固形癌より間質の線維増生を強く認めるため、癌の悪性度や治療抵抗性における癌微小環境の重要性が以前より指摘されている。癌微小環境が、癌細胞の増殖、浸潤、転移、抗癌剤治療耐性に強い影響を及ぼすことが報告されており、膵癌微小環境も治療標的とすることで、最難治癌である膵癌の治療成績の改善を図る戦略が期待されている。本研究では、癌微小環境形成メカニズムを詳細に検討し、乏血性組織が形成される機序や、著明な細胞外基質沈着に伴う組織内圧上昇の過程や薬剤拡散効率低下の過程を明らかにする。また、膵癌内の新規血管新生改変に着目した治療戦略や、細胞外基質沈着の減少や溶解に着目した「癌間質リモデリング」を応用した新規の治療戦略の開発に繋げることを目的としている。そのために、発癌や癌の進展における各段階の詳細な癌微小環境の検討が必要であり、それを可能とするりリソースとして、我々は遺伝子改変膵癌発生モデルマウスの作成を進め、その詳細な解析を進めた。同マウスは、ゼノグラフトモデルとは異なり、前癌病変である膵管上皮内腫瘍性病変や、間質における線維増生を認め、ヒト膵癌組織に類似した病理組織像を認めることを確認した。今後は、癌微小環境における細胞外基質や腫瘍血管の詳細な解析を進め、組織内圧上昇や薬剤送達効果低下の機序を明らかにし、膵癌治療抵抗性改善のための新規治療戦略を開発を進める予定である。目的達成のための手法として、病理組織学的手法だけでなく、網羅的な遺伝子発現解析や、細胞表面抗原によるセル・ソーティング技術を用いて、微小環境形成のメカニズムの検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌微小環境を詳細に解析するにあたり、ヒト膵癌組織と類似した病理組織像を呈する遺伝子改変膵癌モデルマウスであるKPCマウス(Pdx1-Cre; LSL-KrasG12D/+; LSL-Trp53R172H/+)を作成した。KPCマウスは、前癌病変である膵管上皮内腫瘍性病変から、時間経過とともに肝転移、腹膜播腫を生じるようになった。病理組織像の検討では、ヒト膵癌切除組織と同様に、間質の線維増生を認めた。また、進行度に応じて膵臓から初代培養線維芽細胞を樹立した。また、間質標的治療薬の候補として、特発性肺線維症の治療薬であるピルフェニドンが抗癌剤であるジェムシタビンとの併用で有用であることを同所移植モデルで確認し、報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、膵臓から樹立した初代培養線維芽細胞や、病理組織標本からのマイクロダイセクションサンプルを用いて、cDNA アレイ、マイクロRNAプロファイリング、プロテオーム解析やメタボリック・プロファイリングなどの網羅的な解析を行い、膵癌微小環境を制御する分子を同定し、その分子を標的として癌新生血管および癌間質のリモデリング技術の開発を行う。続いて、膵癌微小環境のリモデリングが期待される有望な治療薬を遺伝子改変膵癌モデルマウスであるKPCマウスに投与する。膵癌の微小環境形成に与える影響を、腫瘍血管形成や細胞外基質沈着、組織内圧の変化により評価する。治療成功症例において、cDNA アレイ、マイクロRNAプロファイリング、プロテオーム解析やメタボリックプロファイリングなどの網羅的な解析を行うことでも、微小環境のリモデリングによる変化を評価する。また、ゼノグラフトモデルで有効であった間質標的治療法を、KPCマウスでも評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画はおおむね順調に進展しており、効率的に資金を使用できたため。 試薬類50万円、抗体10万円、 成果発表費10万円 KPCマウス作成料100万円
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